研究課題
腎臓線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化における分子機構は不明な点が多く、特に細胞膜分子の関与については系統だった検討は少ない。本研究ではこの分化過程において活性化する細胞膜分子の同定とその機能解析を目的とした。NRK-49F細胞をTGF-β1で刺激、細胞膜表面分子を回収、銀染色、LC-MSで解析し分子を同定、特異的抗体・阻害剤を用い機能解析をした。TGF-β1刺激によりTGF-β1型受容体(TGFR1)がendocytosisを受け核分画が増加し、Smad 2/3が核で優位に増加し、核特異的にリン酸化(pSmad2/3)を認め、αSMAが有意に増加した。銀染色によりTGF-β1刺激により細胞膜表面で著増する220kD付近の分子が検出され、LC-MS解析により非筋肉型ミオシンⅡA(NMⅡA, 別名myosin-9, MYH9)を同定した。特異的抗体による生化学的検討でもTGF-β1刺激によりNMⅡA細胞膜分画の著明な増加が確認された。またTGF-β1刺激によりNMⅡAは軽鎖リン酸化(pMLC2)の増加を伴っていた。NMⅡAの特異的阻害剤であるblebbistatinで処置したところ、MNⅡAの細胞膜集積と軽鎖リン酸化が阻害され、TGFR1の核移行とSmad2/3のリン酸化と核集積は有意に減少、またαSMAの発現も有意に減少した。以上からMNⅡAの細胞膜表面集積は線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化に決定的に重要な分子機構であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的である腎臓線維芽細胞分化において細胞膜上で活性化する分子を同定する事が出来た。これを軸に同分子の機能解析、相互作用分子の同定とその機能解析、阻害化合物同定実験と発展させることが期待できる。
非筋肉型ミオシンⅡAのKD実験を行う。NMⅡA特異的抗体により免疫沈降を行い相互作用分子をLC-MSで解析し同定する。化合物ライブラリの中からNMⅡA阻害作用のある化合物を同定する。
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