研究課題/領域番号 |
18K08233
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
油井 直史 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (00633976)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎臓線維化 / 細胞骨格 / アクチン / ミオシン / 慢性腎臓病 / 非筋肉型ミオシン |
研究実績の概要 |
CKD進展制御法の発展には腎線維化の分子病態機序の解明、及び分子医学的介入が重要である。我々は多発性骨髄腫治療薬であるボルテゾミブ長期投与により腎機能回復を得て2年に及ぶ血液透析から離脱した維持透析症例を報告し、さらに腎線維化モデルマウスにおける有効性を検討した基礎研究を報告してきた。ボルテゾミブはproteasome inhibitorであり多くの細胞膜輸送体の品質管理に影響するはずである。そのため次の研究ステップとして腎臓線維芽活性化に際し、どのような細胞膜輸送体が機能亢進するか、その同定と機能解析することを目的とした。特に何らかのアミノ酸トランスポーターの同定を期待した。ラット腎線維芽細胞をTGF-β1で刺激し細胞膜タンパクをビオチン標識で回収し高感度銀染色、バンドの切り出し、LC-MSで解析した。TGF-β1刺激により非常に強く細胞膜表面に集積する分子として非筋肉型ミオシンⅡA(NMⅡA)を同定した。NMⅡA特異的阻害剤であるblebbistatinで細胞を処置すると、TGF-β1刺激によるαSMA増加、Smad2/3リン酸化が劇的に阻害されたため、NMⅡAの活性化と細胞膜集積は腎線維芽細胞活性化に極めて重要な分子ステップであると考えられた。NMⅡAはヘルペスウイルス感染の際に受容体として機能するという報告や、膵癌細胞はアルブミンを細胞内に取り込んで利用するといった報告から、当初は何らかのアミノ酸トランスポーターが活性化しアミノ酸を細胞内に取り込み劇的なαSMAの増産に寄与するのではないかと考えていたが、NMⅡAにより何らかの血清タンパクを腎臓線維芽細胞内に取り込んで利用するのではないかと仮説を立てた。NMⅡA抗体による免疫沈降、その中でも血清アルブミンの検出を試みたが、アルブミンをWBで検出するのは一筋縄では行かず現時点で仮説の検証は今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
軸となる基礎的な発見は得られたが、進展的な展開は遂げられなかった。新型コロナ感染症、特にデルタ株、オミクロン株の流行により長期の中断をせざるを得なかったのも影響した。
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今後の研究の推進方策 |
MNⅡAのKD実験系を確立する。TGFβ1刺激によりαSMA増加、Smad2/3リン酸化が起こるが、これを血清添加の有無、アミノ酸添加の有無で検証する。血清があればアミノ酸無しでも起こる、血清が無いとアミノ酸入れても起きないなどを条件検討する。アミノ酸の有無とアルブミンの有無でも比較する。NMⅡAの免疫沈降とLC-MC解析を行う。細胞抽出液だけでなく血清でも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため研究計画の実行に遅延が生じ研究期間を1年延長したため当該助成金が生じた。前述の研究計画の実行のために使用する。
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