研究課題
本研究は腎臓線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化にあたりどのような細胞膜貫通分子が活性化するのかを同定しその機能解析とすることを目的として開始した。前年までにラット由来腎線維芽細胞であるNRK-49F細胞(ATCC CRL-1570)の培養条件を整え多くの知見を得てきた。TGFβ1(5ng/mL)O/N刺激により非筋肉型ミオシンⅡA(MYH9)が細胞膜集積を来すことを見出し、その特異的阻害剤blebbistation(10μM)処置によりSmad2/3の核移行が阻害され、核特異的なリン酸化Smad2, Smad3の発現が阻害され、またαSMAの増加が抑制されることを突き止めた。今年度はさらにこの知見を検証するためMYH9のノックダウン(KD)実験系の作成を試みた。NRK-49細胞を培養し、polybrane(sc-134220)2μg/mL含有DMEMに交換、control-KD lentiviral particles(sc-108080)またはMYH9-KD lentiviral particles(sc-61121-V)5μLを添加した。翌日normal DMEMに交換し5日間培養しpuromycin(sc-108071)selectionを開始した。ウエスタンブロットによる解析でKD群とCTR群の作成成功を確認しさらに解析を進めた。NYH9-KD群ではTGFβ1によるSmad2/3の核移行が有意に減弱しておりαSMAの増加も鈍化していた。以上より腎臓線維芽細胞の活性化の際にMYH9が細胞膜に集積すること、その阻害により筋線維芽細胞への分化誘導は阻害されることを明確にした。今後腎線維化を抑制する治療概念の発展に重要な実験となったと思われた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 119(30) ページ: e2202125119
10.1073/pnas.2202125119