研究課題
本研究では、膜性腎症の中でも責任抗原が不明な特発性膜性腎症について未知の責任抗原の解明を目指すと共に、Phospholipase A2 receptor(PLA2R)やThrombospondin 7A(THSD7A)を含む各責任抗原に対する自己抗体を指標にした病態理解および新規診断法の開発に取り組んでいる。研究2年目の進捗は以下の通りである。未知の責任抗原の同定では、研究1年目に開発した患者血清を用いた免疫沈降法を用いて抗原検索を継続した。また、昨年度の実験で得られた新規抗原候補となるタンパク質の同定作業にも取り組んだ。質量分析により得られた新規抗原候補群からポドサイトに発現する膜タンパク質を抽出して、各候補抗原のcDNA断片を組み込んだ発現ベクターを作成し、各種組換えタンパク質を取得した。得られた抗原タンパク質を用いて患者血清に対する結合試験を開始した。一方、既知責任抗原であるPLA2Rのエピトープ解析では、海外の先行論文にて一次性膜性腎症患者がもつ自己抗体のエピトープとして報告されているシステインリッチドメイン(CysR)、Cタイプレクチンドメイン1番(CTLD1)、Cタイプレクチンドメイン5番(CTLD5)、Cタイプレクチンドメイン7番(CTLD7)、Cタイプレクチンドメイン8番(CTLD8)に対するエピトープ分布解析に取り組んだ。各ドメインの組換えタンパク質を調製して、抗PLA2R陽性一次性膜性腎症患者の診断時血清を用いて解析を実施した。その結果、日本人患者ではエピトープ分布と病勢・予後との間に海外症例で報告されたような明瞭な相関は認められず、日本人患者では診断時の抗PLA2R抗体濃度の方がより予後との相関が強いことが示された。
2: おおむね順調に進展している
未知抗原の同定では候補抗原の発現と患者自己抗体に対する結合性確認を繰り返す作業に移行できている。自己抗体濃度やエピトープ分布による病勢・予後解析では計画通りに推進できてデータの蓄積が進んでいる。
順調に進展しているため今後も当初の研究計画に沿って進める。具体的には、未知抗原同定とPLA2R関連膜性腎症患者およびTHSD7A関連膜性腎症患者の血清を用いた自己抗体濃度およびエピトープ分布による病勢・予後診断法の検討を進める。
研究1-2年目において研究が順調に進みより効率的で低コストな方法で研究を進めることができたことによって次年度使用額が生じた。次年度使用額は新規抗原同定を中心に研究内容を拡充するために使用する予定。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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