研究課題/領域番号 |
18K08245
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
安部 秀斉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (60399342)
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研究分担者 |
櫻井 明子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70707900)
冨永 辰也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (80425446)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 糸球体硬化 / Smad1 / nephroid |
研究実績の概要 |
血管構成細胞において、BMP4-Smad1がC末端のリン酸化により、糸球体硬化への進展に重要な役割を果たしていることを示してきた。成体で各ストレスに応じて再活性化するが、ストレスを除去すると、責任分子Smad1のlinker domainに新たにリン酸化が生じる。各種培養細胞を用いて、高血糖・AGE刺激、アンジオテンシンII刺激、H2O2などによる早期細胞老化誘導を行うと、Smad1のC末端のリン酸化亢進により、細胞機能低下は進行していた。そこで、これらの刺激を早期に除去すると、Smad1の不活化が誘導されて修復過程にも関わる可能性を見い出した。その過程では、linker domainのリン酸化によるSmad1活性の不活化が誘導されていた。それに伴い、コラーゲンなどの糸球体硬化や細動脈硬化に関連する細胞外基質の過剰産生が正常化していた。linker domainのconstitutively active (ca)のconstructを作成し、各細胞へ導入して安定発現株の作出を行った。また、糖尿病モデルマウスを用いて、糖尿病、高血圧、肥満に関して、治療を行い、Smad1 linker domainのリン酸化が、腎組織の硬化病変の改善に重要であることを明らかにした。また、糸球体様スフェロイドに対する、高血糖・AGE刺激、アンジオテンシンII刺激、H2O2などによる早期細胞老化誘導を行ったところ、各構成細胞の遺伝子発現のプロファイルの変化は、qPCR法により解析では、BMP4-ALK3/6-Smad1経路の活性化と連動しており、さらに新たな関連分子が同定された。さらに腎生検により、腎疾患患者尿サンプルおよび腎組織のバンク化より、膜タンパク質では、そのsoluble form、また、exosome中タンパク質、exosome中核酸、cell-free DNAの抽出法が確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に準拠した通りに、血管構成細胞を用いたin vitroの研究、モデルマウスを用いたin vivoの研究とも進捗しており、新たな成果も得られている。マウス尿の収集で、解析に必要な尿量が得られず、再採取が必要になったことはあったが、全体として遅延なく、進行している。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病等の病態が継続する各条件下で、最も有効なlinker domainのリン酸化に関わるERK, MAPK, GSK3betaのシグナルをそれぞれ選択し、そのシグナルを調節することが既に知られている阻害剤および現在、タンパク尿の減少などの効果が報告されている既存薬などを用いて、各細胞におけるSmad1不活化およびSmad1の下流分子であるコラーゲンなどの細胞外基質の産生調節効果を確認する。選定した、糸球体硬化を促進させる候補分子としての病態特異的分子群を対象とし、ERK, MAPK, GSK3betaのシグナル阻害剤や既存の腎症治療薬などによるSmad1不活化の効果を糸球体様スフェロイドにおいて誘導可能かどうかをwhole mount染色等により、解析する。バンク化されている腎組織および尿サンプルを用いて、exosome中タンパク質、exosome中核酸、cell-free DNAのうち、各病態特異的分子群の測定に適した方法により定量を行い、臨床意義の高い分子を選定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
染色に用いる抗体の購入分を使い切ったため、新たに購入しようとしたが、国内在庫がなく、海外よりの輸入となったため、年度をまたぐこととなった。入手次第、染色は開始するが、入手を待っている間に、他の分子の染色を先行させたため、全体としての計画に遅れは生じない。
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