研究課題
本研究の目的は、腎性貧血治療のため、ヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞を分化誘導し、これを生体に導入することにより、エリスロポエチンの生理的な補充を行うことである。さらには、これまであまり明らかになっていなかったエリスロポエチン産生機構を解明することにより、新規腎性貧血治療を開発することにある。平成31年度は、ヒトiPS細胞からエリスロポエチン産生細胞を分化誘導し、高効率にエリスロポエチン産生を行う条件検討と、エリスロポエチン産生・分泌機構を解明することを計画していた。ヒトiPS細胞から誘導したエリスロポエチン産生細胞は、生体と同様に低酸素刺激によりエリスロポエチン産生が増加し、低酸素関連因子が重要な役割を担っていることを明らかにした。さらに、これまでの分化誘導法を改良することにより、高効率にエリスロポエチン産生細胞を誘導する条件検討を行った。また新規治療薬のスクリーニングを行うことも計画していた。臨床応用が期待される新規腎性貧血治療薬のプロリン水酸化酵素阻害剤は、エリスロポエチン産生および分泌を増加させた。ヒトiPS細胞由来エリスロポエチン産生細胞を、腎性貧血治療薬の薬効評価に用いる可能性が示唆された。現在、エリスロポエチン産生細胞の細胞治療への応用を目的として、腎性貧血モデル動物にエリスロポエチン産生細胞を移植し、貧血改善効果を検討している。本研究で得られる成果は、腎性貧血の治療に対する安価でより生理的な管理を可能とする医療技術の向上に加え、貧血に対する新規治療法の開発による本邦の医薬産業界の活性化をもたらすものであると考えている。
2: おおむね順調に進展している
平成31年度に予定していた研究内容については、ほぼ全て終了しており、概ね予想された結果を得ることができた。得られた知見を参考にし、また測定系や改良した分化誘導法を利用し、令和元年度に計画している研究内容に関しても、一部予備実験を開始し、既に準備を行っている。現時点では研究計画の立案に際し、問題となると予想された点についても順調に遂行できている。そのため交付申請書に記載された研究目的に対する達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。
これまでの研究計画に関しては、おおむね順調に推移している。令和元年度は、腎性貧血免疫不全マウスにエリスロポエチン産生細胞を移植し、貧血改善効果を検討するとともに、生体適合性を考慮した医療材料でモジュール(カセット)を作製し移植することを計画している。腎不全および腎性貧血のモデル動物作製は、これまでの予備実験により安定して作製可能である。また細胞移植に関しても、既に確立している。モジュール作製に関しては、インスリン産生細胞等の先行研究を参考に、準備を進めている。研究を遂行する上で課題が生じた場合には、研究計画書に挙げた対策に沿って研究を行う予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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