本研究において、我々は腎尿細管特異的LSDノックアウトマウス(KspLSD1-KOマウス)およびコントロールマウスの高食塩負荷やMR拮抗薬(スピロノラクトン)投与による標的MR遺伝子の発現への影響をrt-PCR法、western blot法、免疫染色で確認した。 浸透圧ポンプによるアルドステロン短期投与実験において、コントロールマウスにおいては血中アルドステロン濃度の上昇に伴いMR標的遺伝子であるENaCαのmRNAの発言上昇が認められた。KspLSD1-KOマウスにおいてはアルドステロン投与に対するENaCαの発言上昇の程度がコントロールに比して有意に強く、MR感受性の亢進が示唆された。Western blot法、免疫染色法についても同様の傾向が認められた。 16週齢から42週齢までの高食塩負荷でKspLSD1-KOマウスではコントロールマウスに比べて有意な血圧上昇が認められたが、両群で長期高食塩負荷による著明な線維化の増強を認め、これらの線維化はMR拮抗薬(スピロノラクトン)投与により通常食と同程度まで抑制されていることが確認された。また、線維化の程度はKspLSD1-KOマウスで強い傾向があり、MR感受性の亢進が示唆された。 令和2年度は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)流行のため、実験計画の停滞を余儀なくされた。動物実験縮小のため、腎KspLSD1-KOマウスのDOCA-salt負荷や高脂肪食負荷や腸管上皮特異的LSD1ノックアウトマウス作成を行うことはできず、既に得られた検体での検討を行った。LSD1遺伝子多型(SNP)の臨床研究については、大学病院への外来患者受け入れ中止のため行うことができなかった。
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