研究課題/領域番号 |
18K08251
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上田 誠二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80322593)
|
研究分担者 |
山岸 昌一 久留米大学, 医学部, 教授 (40281026)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 終末糖化蛋白 / 末梢動脈疾患 / 血管石灰化 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、「糖尿病やCKDで蓄積する終末糖化蛋白(AGEs)がPADの発症進展および治療抵抗性に強く関与する」との仮説を検証するために①CKD患者の横断疫学的手法により、AGEsとPADの有病率、重症度、また患者内皮前駆細胞機能不全との関連を分析 ②PAD患者におけるAGEsと幹細胞治療効果との関連の分析 ③CKDモデル動物にAGEsと血管新生・修復との関連、また幹細胞治療への影響 以上3つのアプローチで仮説を検証し、さらに新規治療法の確立のため、AGEs/ receptor for AGEsに対するDNA-aptamerの効果を検証することを目的としている。臨床横断研究においては、一般人口に比し、維持透析患者ではAGEsが著明に増加していること(n=51)、またAGEsレベルとABIには強い性の相関が、またPADと診断された群ではAGEsが有意に観察された。さらには有意差は認めないものの、血管石灰化指標であるAgaston score(CTにて測定)とAGEsの間には正の関連(r=0.26, p=0.10)が観察された。また、PAD治療を行った症例に関しては治療有効性とAGRsの間には明らかな有意差を認めなかった。以上の結果から、治療抵抗性との関連は認めなかったものの、透析患者で蓄積するAGEsは動脈硬化、血管石灰化、PADの発症進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。現在、腎不全動物モデルを作成し、AGEs/ receptor for AGEsに対するDNA-aptamerを用い、AGEsの血管における詳細な役割の解析を進めている。5/6腎摘出マウスでは、明らかな大血管障害は認めないものの、腓腹筋における微小血管網の脱落が観察され、この脱落がAGEs aptamerの持続投与により完全に抑制されることを見いだしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観察症例数が限られていること、またヒト腎不全症例では交絡因子が多く存在することが想定され、治療抵抗性との関連は見いだされなかったが、AGEsとPADの有病率、血管石灰化とは仮説通りの関連が見いだされていること、また動物実験も現在COVIDの影響で実験の中断を余儀なくされているが、微小血管障害がAGEs aptamerで抑制されることを再現性も含め、確認できており、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
微小血管のみならず、大血管障害、血管石灰化へのimpactを検証するため、現在血管石灰化動物モデルの作成に着手している。またEPCとAGEの関連については、培養EPC細胞にAGEsを添加し、EPC機能やその障害のメカニズムの分子機序の解明にも着手している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
生化学検査など、次年度に一括して測定を行うため、翌年度分へと請求させて頂きました。
|