研究実績の概要 |
本申請研究では、「糖尿病やCKDで蓄積する終末糖化蛋白(AGEs)がPADの発症進展および治療抵抗性に強く関与する」との仮説を検証中である。臨床横断研究においては、一般人口に比し、透析患者、特にPAD患者ではAGEsが著明に増加していること、またAGEsレベルと動脈硬化指標(ABI, Agatston score)に関連があることを見出した。以上の結果から、治療抵抗性との関連は認めなかったものの、透析患者で蓄積するAGEsは動脈硬化、血管石灰化、PADの発症進展に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。現在、腎不全動物モデルを作成し、AGEs/ receptor for AGEsに対するDNA-aptamerを用い、AGEsの血管における詳細な役割の解析を進めている。5/6腎摘マウスでは、明らかな大血管障害は認めないものの、腓腹筋における微小血管網の脱落が観察され、この脱落がAGEs aptamerの持続投与により完全に抑制されることを見い出し報告した(Sci Rep. 2020;10:17647.)。現在、血管石灰化CKDモデルマウスを作成し、大血管の石灰化およびPAD病態に如何に関与しているか検討を継続している。また、AGEsによる治療抵抗性の分子機序解明のため、培養血管内皮細胞、内皮前駆細胞を用い解析を行っている。その結果、AGEsがその受容体であるRAGEを介してRac-1の活性→ミネラルコルチコイド受容体(MR)をアルドステロン非依存性に活性化することにより、内皮機能障害、内皮再生障害に深く関与する可能性が明らかとなってきている。現在これらの再現性を確認するとともに、AGE/ RAGE aptamerあるいはMR拮抗薬の治療薬としての可能性を探究している。
|