研究課題/領域番号 |
18K08252
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10468572)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | IgA腎症 / APRIL / TLR / 粘膜免疫 / 免疫複合体 |
研究実績の概要 |
IgA腎症の病態に粘膜免疫応答異常の関与が考えられているが、本邦では扁桃摘出の有効性から、扁桃を主体とする上気道粘膜粘膜(NALT)免疫応答異常が考えられている。一方で、欧州では腸管選択的ステロイドの有効性から、腸管粘膜(GALT)の関連も注目される。本研究では、糖鎖異常IgA産生における責任粘膜組織を解明するため、IgA腎症発症、非発症ddYマウスの血清、脾細胞、NALT、GALT、骨髄細胞を用いて、IgA、糖鎖異常IgA、免疫複合体産生量の比較検討を行った。続いて、IgA腎症発症ddYマウスを無菌化飼育し、specific pathogen free(SPF)へ環境移行、あるいは、NALT/GALTの独立した粘膜刺激を加えることで、IgA腎症における粘膜免疫応答異常を解析した。 IgA腎症発症ddYマウスと、非発症ddYマウスより、NALT、GALT、末梢血、脾臓、骨髄を用いてB細胞分画を抽出し、培養した後に培養上清中の糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生量を解析したところ、IgA腎症発症ddYマウスで明らかに産生が亢進していることが判明した。しかし、GALTにおいては両群間で有意差を認めなかった。 次に、IgA腎症発症マウスを無菌化するとIgAの産生が劇的に改善され、糸球体IgAとC3の沈着が大幅に改善した。SPFへ環境移行するとIgA腎症の再構成が認められた。そこで、無菌化したddYマウスにTLR9のligandであるCpG-ODNを鼻腔感作群と、便移植群にわけて、IgA腎症の再構成が可能か否か、また糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生量を解析したところ、NALTの刺激群で糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生亢進およびIgA腎症の再構成がみられた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IgA腎症自然発症gddYマウスと、非発症ddYマウスより、NALT、GALT、末梢血、脾臓、骨髄よりB細胞分画を抽出し、培養した後に培養上清中の糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生量を解析することで、腎炎惹起性IgA抗体産生に関与する粘膜組織の同定が終了した。また、ddYマウスを無菌化することでの解析を急ぎ、粘膜免疫応答が必要であることが明確に示されたことは、今後の研究推進にとって非常に意義が高い。 しかし、形質芽球/形質細胞の局在や、ホーミングレセプターの詳細な解析は完了できず、現在研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はマウスの無菌化を依頼するうえで、予想以上に解析が進捗した一方で、当初は今年度の研究計画であった形質芽球/形質細胞の局在や、ホーミングレセプターの詳細な解析は完了することができなかった。来年度、この点に重きをおいて、研究推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホーミングレセプターについては、α4β1、α4β7の陽性比率を末梢血とNALT、GALT、脾臓、骨髄間で解析する予定であったが、今年度中の解析が時間的に不可能であったため、来年度に予算を計上した。
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