研究課題
IgA腎症の病態に粘膜免疫応答異常の関与が考えられているが、本邦では扁桃摘出の有効性から、扁桃を主体とする上気道粘膜粘膜(NALT)免疫応答異常が考えられている。一方で、欧州では腸管選択的ステロイドの有効性から、腸管粘膜(GALT)の関連も注目される。腎炎惹起性IgA抗体を産生する形質細胞の局在を解析するために、IgA腎症自然発症gddYマウスと、非発症ddYマウスより、NALT、GALT、末梢血、脾臓、骨髄よりB細胞分画を抽出し、培養した後に培養上清中の糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生量を解析した。IgA腎症自然発症gddYマウスのNALTと末梢血の培養上清で糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生量が増加していた。しかし、短寿命型IgA産生形質芽球(CD19+CD138+)や長寿命型IgA産生形質細胞(CD19-CD138+)については、いずれもかなり細胞数が少なく、両群間で明らかな差は認められなかった。さらに、各粘膜と骨髄において、ホーミングレセプターα4β1、α4β7の陽性比率を解析した。IgA腎症自然発症gddYマウスでは、非発症ddYマウスと比較し、NALTと骨髄細胞において、α4β1陽性細胞比率が高値であった。前年度にgerm-free化した自然発症gddYマウスにNALTあるいはGALTの粘膜別に感作をかけることで、NALTが糖鎖異常IgAの責任粘膜組織であることを示したが、それを裏付ける研究成果であった。また、IgA腎症自然発症gddYマウスに抗BAFF抗体と抗APRIL抗体を投与したところ、抗APRIL抗体投与群でのみ、糖鎖異常IgAの産生低下による腎炎の改善効果がみられた。しかし、予想に反し、抗APRIL抗体投与にて骨髄でのIgA産生形質細胞数は変化がなく、末梢血にてIgA産生形質細胞数の減少がみられた。
2: おおむね順調に進展している
これまで、IgA腎症自然発症gddYマウスと、非発症ddYマウスより、NALT、GALT、末梢血、脾臓、骨髄よりB細胞分画を抽出し、培養した後に培養上清中の糖鎖異常IgAおよびIgA-IgG免疫複合体の産生量を解析した。また、ddYマウスを無菌化し、NALTへのTLR9の刺激にてIgA腎症を再構成することができたことから、腎炎惹起性IgA抗体産生に関与する粘膜組織がNALTであることを同定することができた。また、ホーミングレセプターの解析からも、扁桃で感作された細胞が骨髄へホーミングしていることが示唆された。さらに、抗APRIL抗体で末梢血におけるIgA産生形質細胞を抑制し、腎炎惹起性IgAの産生を低下させることが判明した。しかし、今年度は、IgA腎症自然発症gddYマウスと、非発症ddYマウスにおける短寿命型IgA産生形質芽球(CD19+CD138+)と長寿命型IgA産生形質細胞(CD19-CD138+)の差異については信憑性のある解析結果が得られず、今後の課題とする。
短寿命型IgA産生形質芽球(CD19+CD138+)と長寿命型IgA産生形質細胞(CD19-CD138+)の腎炎惹起性IgAの産生における役割について、これまで用いてきた抗体をかえて、さらに検証をすすめる。また、抗APRIL抗体と抗BAFF抗体投与でのホーミングレセプターα4β1の陽性比率の変化も検証する。また、これまでの検証からNALTが責任細胞と示唆されたため、今後はヒト扁桃細胞での解析を行う。ヒトIgA腎症患者の末梢血と治療により摘出した扁桃組織と末梢血を用い、扁摘前後での末梢血のIgA産生形質細胞の比率および、α4β1の陽性比率の変化を解析する。
抗APRIL抗体と抗BAFF抗体投与でのホーミングレセプターα4β1の陽性比率の検証については、今年度中には間に合わず、来年度に予算計上した。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件)
Kidney Int
巻: 97 ページ: 340-349
10.1016/j.kint.2019.08.022
日本腎臓学会誌
巻: 62 ページ: 26-33
巻: 19 ページ: 30174-30177
10.1016/j.kint.2019.01.031
Juntendo Medical Journal
巻: 65 ページ: 537-542
Kidney Int Rep
巻: 30 ページ: 1717-1724
10.1016/j.ekir.2019.08.015
Frontiers in Immunology
巻: 29 ページ: 2681
10.3389/fimmu.2019.02681
IgA腎症の病態と治療
巻: 1 ページ: 93-96
医学のあゆみ
巻: 269 ページ: 521-525