研究課題
本研究は「糖鎖修飾」に着目して嚢胞性腎疾患群の病態機序を明らかにすることが目的である。特に、①糖脂質代謝や②糖タンパク糖鎖修飾に焦点をあて、それらの生合成や細胞内シグナルを阻害する③単糖代謝阻害剤を探索、その効果とメカニズムを明らかにする。本年度は、①と②の阻害剤である2-デオキシグルコース(2DG)、Genz123346、マンノースおよびその誘導体が、糖鎖変化をもたらすメカニズムについて検討した。特に、単糖の活性型フォームである糖ヌクレオチドに着目した。例えば、ADPKDに対する病態進行抑制において、2DGは解糖系への阻害作用が主要なメカニズムとして考えらてきたが、我々の研究では、2DGから代謝される希少糖ヌクレオチド(GDP-2DG-マンノース)の実在を証明した。さらに、2DGから代謝されたGDP-2DG-マンノースは、アスパラギン結合型糖鎖の分解を誘導し、細胞外小胞の分泌を抑制する機能性分子であった。一方、マンノースには抗腫瘍効果があり、抗がん剤の化学療法の効果を高めることが知られている。昨年度の研究において、マンノースの細胞膜透過性を高めたペンタアセチルマンノースが嚢胞腎細胞株の増殖を抑えた。上記と同様に、希少糖ヌクレオチドを探索したところ、UDP-マンノースが存在することを明らかにした。さらに本年度は、これらの希少糖ヌクレオチドを高精度に測定するためにプロトコル論文を発信し、技術が普及するように啓蒙した。以上、本研究をつうじて、単糖代謝阻害剤の薬効機序に希少糖ヌクレオチドを介する新たなメカニズムが関与する可能性を明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
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