研究課題/領域番号 |
18K08267
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
片山 一朗 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (80191980)
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研究分担者 |
楊 伶俐 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任講師 (40711784)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / メラノサイトニッチ / 細胞接着 / 肥満細胞 / GPNMB |
研究実績の概要 |
白斑部ではメラノサイトのE-カドヘリンの発現低下がメラノサイトの消失の誘因と考えられているが、メラノサイトとの接着に関わると考えられる表皮基底層ケラチノサイト、基底膜領域蛋白の発現動態と白斑の発症とその維持に関わる機序は不明である。そこで本年度は基底層ケラチノサイトで発現する細胞膜蛋白の発現に関して白斑部で発現低下を示す蛋白のスクリーニングを行い、表皮幹細胞マーカー(Lgr6,Krt6B, Podoplanin)、表皮Transient amplifying cellマーカー、(α6-Integrin,E-FABP)、メラノサイトマーカー(GPNMB、Ecadherin)、基底膜蛋白(Col17A1, Laminin V, β4-Integrin)などの免疫染色を行い、メラノサイトマーカーであるGPNMBが基底層ケラチノサイトにも存在し、IFNγがJAK2依存性に白斑部で消失している可能性を見いだした(Sci Rep in press)。また紫外線の照射は単独では容量依存性にこの蛋白発現を抑制したが、逆にSCF、TNFαの発現を増強した。さらにこの蛋白をsiRNAにてノックダウンした培養ヒトケラチノサイトはSCFの発現を増強した。これらの結果より、酸化ストレスと免疫応答により白斑が誘導された病変部ではメラノサイトの消失と平行してこの候補蛋白が減少することで炎症性サイトカインの産生誘導によるメラノサイトの消失に関わる可能性が考えられたが、さらにSCFの産生を介して、真皮肥満細胞の増殖にも関わる可能性が考えられた。我々は白斑病変部において肥満細胞の増加を確認しており、肥満細胞由来のトリプーターゼはGPNMBの発現を抑制した。現在正常ヒトメラノサイトとケラチノサイトの共培養の系で両細胞の接着とメラノソーム移送の系を用いケラチノサイト特異的にGPNMBをsiRNAによりノックダウンし、その接着能、メラノソーム移送への影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
メラノサイトニッチの維持に関わると考えられる分子が白斑病変部で消失していることが確認できた。そのsiRNAをケラチノサイトに導入した実験系でのメラノサイトとケラチノサイトの共培養による両細胞のクロストークをライブイメージングで観察するシステムが確立出来たことにより、今後白斑の発症とその進展、維持に関わる病態解析が可能になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
美白化粧品ロドデンドロールにより白斑が誘発され、またそのマウスモデルが報告されている。(Abe Y,et al.J Dermatol Sci.2016 ;81:35-43)。今後、ヒト皮膚同様に基底層にメラノサイトが分布する正常マウスの耳介、尾部にロドデンドロールをAbe等の報告に基づいて塗布し、その経過でのメラノサイトニッチマーカの消失に関わると考えられる候補蛋白の動態と基底層からのメラノサイトの消失機序を検討する。さらにIn vitroにおいてケラチノサイトとメラノサイトのクロストークに関わる分子機序を検討し、白斑の有効な治療法の開発研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体の納品等、実験の滞りが若干あり、予定通り進まなかった点があった。研究内容に関係する出張旅費が計上されなかった。研究成果としては当初の計画以上に進展があり、今後白斑の発症とその進展、維持に関わる病態解析が可能になると考えられるため、実験を増やす予定である。
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