研究実績の概要 |
白斑部ではメラノサイトのE-カドヘリンの発現低下がメラノサイトの消失の誘因と考えられているが、表皮基底層ケラチノサイト、基底膜領域蛋白の発現動態と白斑の発症とその維持に関わる機序は不明である。本年度は引き続き、基底層ケラチノサイトで発現する細胞膜蛋白の発現に関して白斑部で発現低下を示す構造蛋白のスクリーニングを行い、メラノサイトマーカー(GPNMB、E-cadherin)、基底膜蛋白(Col17A1, Laminin V, β4-Integrin)などの免疫染色を行い、メラノサイトマーカーであるGPNMBが基底層ケラチノサイトにも存在し、IFNγがJAK2依存性に白斑部で消失している可能性を見いだした(Sci Rep.10:1-11,2020)。この蛋白をsiRNAにてノックダウンした培養ヒトケラチノサイトはSCFの発現を増強したしたことより、メラノサイトの皮膚への遊走、ニッチへの再定着にSCFが代償性に寄与する可能性が考えられた。これらの結果より、病変部ではメラノサイトの消失と平行してこの候補蛋白が減少することで炎症性サイトカインの産生誘導によるメラノサイトの消失に関わる可能性が考えられたが、SCFの産生を介して白斑の回復にも関与する可能性が考えられた。我々は白斑病変部において肥満細胞の増加を確認しており(J Dermatol Sci.99:140-143,2020)、肥満細胞由来のヒスタミンはメラノサイトのメラニン産生を増強することにより、白斑部での病理学的な変化を説明できたと考える。またSCFは真皮線維芽細胞からも産生されるが、今回合わせて検討した白斑部線維芽細胞で、コラーゲンの合成がとその分解酵素の発現が亢進していることも見いだし、従来考えられていた以上に表皮、真皮そして免疫システムのクロストークが重要な疾患であることを明らかにすることができ、今後の白斑治療の開発に繋がると考えられる。
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