研究課題/領域番号 |
18K08272
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
金蔵 拓郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70177509)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CD147/basigin / MCT / T細胞 / 乾癬 |
研究実績の概要 |
CD147/basiginはモノカルボン酸トランスポーター(monocarboxylate transporter; MCT)の細胞膜への正常な発現をサポートし、解糖系の制御を介してT細胞の分化と活性化に関与している。本研究はCD147/basigin を介するTh細胞の分化制御機構と乾癬病態形成を解明する目的で計画された。 平成31年度はCD147/basiginノックアウトマウスが用意できるまでの間にヒト乾癬患者のサンプルを用いた研究を行った。その結果、患者の末梢血好中球上ではCD147/basiginの発現が亢進しており発現量と乾癬の重症度(RASIスコア)は有意に相関すること、病変皮膚の表皮細胞と真皮に浸潤しているリンパ球でCD147/basiginの発現が亢進していること、真皮に浸潤しているCD3+ROR γ+細胞およびCD4+ROR γ+細胞上でCD147/basiginの発現が亢進しておりMCT1とcolocalizeしていることが明らかになった。 次にCD147/basiginノックアウトマウスとカウンターパートの野生型マウスが10匹ずつ用意できたのでイミキモドを背部皮膚に外用し乾癬様皮疹の誘発について比較検討した。ノックアウトマウスでは野生型に較べて肉眼的皮膚症状が著明に軽度でPASIスコアは有意に低値であった。また脾臓におけるCD4+ROR γ+細胞数は野生型では優位に増加したがノックアウトマウスでは有意な増加はみられなかった。 以上の結果はヒト乾癬の病態にCD147/basiginが関与していること、マウスモデルにおいて乾癬の病態形成とCD4+Th細胞のTh17細胞への分化にCD147/basiginが関与していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するにはCD147/basiginノックアウトマウスが不可欠である。ホモのノックアウトマウスは精子形成不全、着床障害、雌性不妊などの表現型を示すため、ホモ同士をメイティングした場合は胎生致死である。ヘテロのマウスをメイティングしてホモのノックマウスが得られる確率は計算上25%であるが、上記の理由でホモのノックアウトマウスが得られる確率が極めて低く平成30年度には本研究を遂行するのに必要な数のノックアウトマウスが用意できなかった。しかし連携研究者らの尽力で平成31年度にはノックアウトマウスが十分な数揃ったため研究が順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
イミキモド誘発乾癬様病変を有するノックアウトマウスのサンプルを用いて皮膚の病理所見、免疫染色所見の解析を進める。またホモのノックアウトマスではCD147/basiginの発現はリンパ球でも表皮ケラチノサイトでもノックアウトされている。乾癬の病態はリンパ球のミニ依存しているのか、表皮細胞も関与しているのかを明らかにするために、ホモノックアウトの骨髄を用いて骨髄キメラマウスを作成しノックアウトマウスと同様の研究を推進する。
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