CD147/Basiginはモノカルボン酸トランスポーター (MCT) の細胞膜発現をシャペロンとしてサポートすることで癌細胞の解糖系を制御している。一方Tリンパ球の分化と活性化も解糖系に依存している。乾癬の病態形成においてTh17細胞が中心的な役割を果たしていることから、CD147/BasiginがTh17細胞分化を介して乾癬病態に関与している可能性を検討する目的で本研究を計画し、以下の事実を解明した。 ヒト乾癬患者の血清と皮膚でCD147の発現が有意に亢進していた。In vitroでマウスCD4+T細胞のCD147をノックダウンするとMCTの膜発現が消失しTh17細胞への分化能を失った。次にマウスの皮膚にイミキモド(IMQ)を塗布すると乾癬様の皮膚炎を生じる実験系を用いてin vivoで検討した。CD147ノックアウトマウスでは野生型と比較して、病変部に浸潤するリンパ球上のMCT の発現が低下しTh17細胞が有意に少なく、皮膚炎の症状が軽度であった。また脾臓におけるTh17細胞数が有意に低下していた。T細胞が重要であることを確認するため免疫細胞におけるCD147発現が欠損した骨髄キメラマウスを作成して検討した。CD147ノックアウトマウスと同様,骨髄キメラマウスでも皮膚病変におけるTh17細胞数の減少、皮膚炎症状の軽減、脾臓のTh17細胞数の低下がみられた。 以上の結果は、CD4+T細胞上のCD147が解糖系を介してTh17細胞への分化を促進し乾癬の病態形成に重要な役割を果たしていることを示す。近年乾癬治療に用いられる生物学的製剤はTh17細胞が産生するIL-17やTh17を活性化するIL-23をターゲットとしているのに対して、Th17細胞への分化を制御するより根本的な治療の開発につながる成果と考えられる。
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