研究課題/領域番号 |
18K08274
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
加藤 則人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30244578)
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研究分担者 |
峠岡 理沙 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80464585)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アレルギー / 皮膚炎 / Siglecs |
研究実績の概要 |
本研究では、自己の細胞成分によって免疫反応が生じることを防ぐための生体防御機構の一つであるSiglecs (sialic-acid-binding immunoglobulin-like lectins)の発現とその調節機構を皮膚組織で検討するとともに、Siglecs由来のシグナルを利用して、アトピー性皮膚炎を始めとするアレルギー疾患や自己免疫疾患の治療法の開発に貢献することを目的としている。 まず、これまで検討されていないアレルギー性皮膚炎の組織におけるSiglecsの発現を検討した。ハプテンであるTrinitrochlorobenzene (TNCB)によるアレルギー性接触皮膚炎のモデルマウスで、ヒトSiglec-9のマウス・オーソログであるSiglec-Eの発現を免疫組織化学的に検討したところ、表皮を構成する表皮角化細胞や表皮ランゲルハンス細胞にはSiglec-Eの発現は見られなかったが、真皮に存在する白血球にSiglec-Eの強い発現が見られた。また、Siglec-E chimera Fcの発現は、真皮の広い範囲に見られた。 さらに、接触皮膚炎モデルマウスの皮膚組織からRNAを抽出してreal time-RT-PCRを行ったところ、正常皮膚組織に比べてアレルギー性接触皮膚炎マウスの皮膚組織では、Siglec-E mRNAの発現が著明に上昇していることが明らかになった。 以上のことから、アレルギー性接触皮膚炎では、Siglec-Eの発現が炎症反応によって浸潤する白血球において増強することが明らかになり、Siglec-Eがアレルギー性接触皮膚炎の病態形成に何らかの役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、アレルギー性接触皮膚炎のモデルマウスの皮膚組織におけるSiglec-EのタンパクおよびmRNAレベルでの発現が評価でき、皮膚におけるアレルギー反応においてSiglec-Eが何らかの役割を果たしている可能性を示唆する結果が得られたから。 ヒトのアレルギー性皮膚疾患におけるSiglec-9の発現についても、研究方法は確立しているため、医学倫理審査委員会での承認が得られ次第、すぐに検討することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アトピー性皮膚炎のモデルマウスの皮膚組織において、Siglec-Eの発現について検討する。また、医学倫理審査委員会での承認が得られ次第、ヒトのアレルギー性皮膚疾患におけるSiglec-9の発現についても検討する。 その後、マウスのアレルギー性接触皮膚炎のモデルマウスやアトピー性皮膚炎のモデルマウスにおいて、Siglec-Eのリガンドを刺激した際のアレルギー炎症反応への効果やアレルゲンに対する耐性の獲得などへの影響について詳細に解析する予定である。
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