研究課題/領域番号 |
18K08275
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
橋本 隆 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 特任教授 (20129597)
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研究分担者 |
TEYE KWESI 久留米大学, 付置研究所, 助教 (30599303)
石井 文人 久留米大学, 医学部, 准教授 (80330827)
鶴田 大輔 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90382043)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クラススイッチ / サブクラス / 自己抗原 / 自己抗体 / 自己免疫性水疱症 / 免疫グロブリン / 免疫ブロット法 / リコンビナント蛋白 |
研究実績の概要 |
自己免疫性水疱症はさまざまな皮膚抗原に対する自己抗体を示す疾患であり、多くの自己免疫性水疱症はIgG抗体を示すが一部はIgA抗体を示す。その他、IgGとIgAの抗表皮細胞膜抗体を同時に示す疾患とIgGとIgAの抗表皮基底膜部抗体を同時に示す疾患がある。また近年、水疱性類天疱瘡においてIgGに加えてIgE抗体が出現することが示されている。これら異種クラスの免疫グロブリンはクラススイッチリコンビネーション(CSR)を経て発現しているが、CSR過程を追跡する研究および異種クラス自己抗体の病原性に関する詳細な研究はない。そこで本研究では、IgGとIgA抗体を同時に示す疾患群とIgE抗体を有する水疱性類天疱瘡について、各クラスの自己抗体の産生におけるCSRの関与を明らかにし、さらに、各クラスの自己抗体の病原性の有無と相違を検討することとした。 当該年度中に、IgG/IgA天疱瘡と線状IgA/IgG水疱性皮膚症におけるIgGとIgA抗体の存在、抗BP180型粘膜類天疱瘡におけるIgGとIgA抗体の存在、水疱性類天疱瘡におけるIgE抗体の存在について、多数の症例と血清を渉猟し、渉猟した血清中に上記のさまざまな免疫グロブリンクラスの自己抗体が存在することを、各種蛍光抗体間接法、免疫ブロット法およびELISA法による検索で確認した。さらに、BP180に対する反応を詳細に検討するため、多数のBP180のN末端およびC末端部のさらに狭い部分について、特異的プライマーを作成し、それを用いたPCR法によりcDNAを単離し、得られたcDNAを発現ベクターに組み込み、リコンビナント蛋白を作成した。今後、これらのリコンビナント蛋白と、各種のIgG/IgAサブクラス二次抗体を用いたドットブロット法あるいは免疫ブロット法で、クラススイッチの詳細を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに本研究に必要な血清サンプルの渉猟は終了し、実験に用いるリコンビナント蛋白の作成もおおむね終了している。今後、これらの血清サンプルと実験試料を用いて、免疫ブロット法などによる最終の検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに本研究に必要な線状IgA/IgG水疱性皮膚症および抗BP180型粘膜類天疱瘡患者を中心とした血清サンプルの渉猟は終了し、実験に用いるリコンビナント蛋白の作成もおおむね終了している。 今後、IgGとIgA抗体産生B細胞が同じ抗原結合性を有するIgMあるいはIgG産生B細胞からクラススイッチリコンビネーションにより生じたかどうかを検討するために、これまでに作成したリコンビナント蛋白とIgG1-IgG4、IgA1、IgA2の6種の免疫グロブリンサブクラスおよびIgE抗体に対する特異的二次抗体を用いたドットブロット法、免疫ブロット法およびELISA法を施行し、クラススイッチの詳細を追跡する。すなわち、IgGとIgA抗体のサブクラスとその反応するエピトープを詳細に検討することで、異なったサブクラスの抗体が同一のB細胞からクラススイッチで生じたか、別のB細胞から産生されたか検討する。 さらに、患者血液から単離したB細胞の免疫グロブリン遺伝子を、それぞれの抗体クラスを特異的に増幅するプライマーを用いたPCR法によりクローニングし、ファージディスプレイ法を用いて各種皮膚抗原に対するモノクローナル抗体をスクリーニングし、その可変領域遺伝子を解析する。この結果と抗体クラスの情報を統合することで、クラススイッチ過程を再構築する。 その後、線状IgA/IgG水疱性皮膚症および抗BP180型粘膜類天疱瘡患者血清からBP180蛋白の各種エピトープに反応するIgGおよびIgA自己抗体を単離してIgGとIgA抗体の病原性の有無と相違を検討する。 以上の実験の結果をまとめ、各種自己免疫性水疱症におけるIgG、IgA抗体の産生における免疫グロブリンクラススイッチの詳細を明らかにし、さらに、抗BP180型粘膜類天疱瘡、線状IgA/IgG水疱性皮膚症の病態し、新しい自己免疫性水疱症の分類を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の研究において、新規血清に関する各種の免疫学的実験の試薬の購入、各種のDNA実験やリコンビナント蛋白の作成のための試薬の購入やDNAシーケンス施行などに研究費の使用を予定していたが、研究室に保存してある試薬および大学内施設の利用で十分に実験を進めることができたため、研究費を残すことができた。また、最終年度には、最終的にクラススイッチの詳細を明らかにするため、多くの血清についてドットブロット法、免疫ブロット法、ELISA法を用いた大規模な実験を施行する必要である。さらにB細胞単離、ファージディスプレイライブラリー作成、DNAシーケンシングなどの実験に高額の費用がかかる。これらの実験を施行するために、次年度にかなりの研究費残す必要があった。以上の理由から、研究費に1,666,493円の残額が生じた。上記のように、最終年度の令和2年度は、最終の結論を得るために、各種免疫グロブリンサブクラス抗体を用いたドットブロット法、免疫ブロット法、ELISA法を施行するとともに、患者からのB細胞単離、ファージディスプイイライブラリー作成、DNA実験などの詳細な研究を施行する。これらの実験のため残額を含めた研究費を全額使用する予定である。
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