研究課題/領域番号 |
18K08284
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
今井 康友 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10529514)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | IL-33 / SCGB蛋白 |
研究実績の概要 |
インターロイキン-33(IL-33)は2型自然リンパ球(ILC2)を活性化してアレルギーを誘発する炎症性サイトカインである。申請者らは、ケラチン14プロモーターの制御下にIL-33を過剰産生する遺伝子改変マウス(IL-33Tg)を作成し、このマウスがILC2の活性化を伴ってアトピー性皮膚炎(AD)を自然発症することを証明した。最近、IL-33Tgマウスの皮膚に誘導される遺伝子群を解析し、ネコアレルギーの主要抗原に類似し機能が未知の分泌タンパクであるScgbファミリーが高発現することを見いだした。しかし、Scgbファミリー蛋白がIL-33で誘導されるメカニズムや、ヒトのADの病態における役割は未だ明らかではなかった。 まず、IL-33Tgマウスの皮膚でin situ ハイブリダイゼーションを行ったところ、Scgbファミリー遺伝子の発現は皮膚の構造のうち、表皮で増加することが判明した。 次に、ヒトAD患者におけるScgbファミリータンパクの局在を明らかにするべく、ヒトAD患者の組織と健常人の正常皮膚組織の両者において、Scgbファミリータンパクの免疫染色を行った。まず、正常皮膚でも、ケラチノサイトの核を中心にScgbファミリータンパクが局在していることが判明した。次に、in situ ハイブリダイゼーションの結果から予想された通り、(マウスのADモデルだけではなく)ヒトAD患者においても、表皮でScgbファミリー蛋白が増加していることが明らかとなった。さらに、その分布においても核だけでなく細胞質にも染まるなど、健常皮膚とは異なった免疫染色のパターンを示すことが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)皮膚のマイクロバイオームの変化の検討について、次世代シーケンサーMiSeqを用いての皮膚マイクロバイオームのメタゲノム解析を行う予定であったが、本学では測定設備がなく共同研究先で行う予定としていたが、共同研究先の機材の都合で実験が遅延しており、コントロールのデータ解析もまだ行えていない状態である。 (2)IL-33などに関して、プロテインアレイを用いた血中サイトカインおよびケモカインの濃度の測定などの免疫学的解析を実施する予定であったが、にわかに抗IL-33抗体がヒトのアトピー性皮膚炎に有効であるという臨床試験結果が米国で発表され、現在、IL-33はアトピー性皮膚炎の治療標的として最も着目される話題といって過言ではない。そのため、世界的にIL-33を解析するための抗体が大きなラボに買い占められてしまい、世界的にすべて品切れとなっており、これらの市販品の抗体が(メーカーにかかわらず)入手できる目処がまったく立たない状態になってしまった。
|
今後の研究の推進方策 |
IL-33関連のシグナルに関しては、現在非常に競争が激しい分野になってしまったと言わざるをえない。申請者らはリコンビナント蛋白と抗体の作成には実績があり、特異的な抗体を自作して研究を継続する方針とする。また、市販のモノクローナル抗体の代わりに自作のポリクローナル抗体を使用することに伴う実験の信頼性低下に関しては、ノックアウトマウスで免疫染色されないというネガティブコントロールを用意することで対応していく。
|