研究実績の概要 |
研究期間最終年度となる令和2年度は、昨年度に樹立したPIP3レベルの異なるメラノーマから樹立した細胞株を用いて、増殖能、およびBRAF阻害薬、MEK阻害薬に対する感受性を調べた。再現性、定量性を高めるために、解析は全自動生細胞解析システムIncuCyteを用いて行った。用いた細胞株は全てPten遺伝子がホモ欠損なのでP0と表示し、Inpp4b遺伝子については野生型をI2, ヘテロ欠損をI1、ホモ欠損をI0であらわした。すなわち、用いた細胞はP0I2, P0I1, P0I0であり、それぞれ2系統ずつ解析した。本計画では、Pten変異にInpp4B変異が加わると、より悪性度の高いメラノーマになること、すなわち増殖能、薬剤抵抗性が高まることを予想した。 (増殖能について)予想通り、P0I1株は2系統ともP0I2株より増殖能が高まっていた。しかし、P0I0株については、1系統はP0I1株と同程度増殖能が高まっていたが、もう1系統はP0I2とほぼ変わらなかった。 (BRAF阻害薬、MEK阻害薬感受性について)予想通り、P0I1株は2系統ともP0I2株よりBRAF阻害薬であるデブラフェニブ、および、MEK阻害薬であるPD0325901に対する抵抗性が高まっていた。しかし、P0I0株については、1系統はデブラフェニブ、およびPD0325901に対する抵抗性がP0I2株より高まっていたのの、P0I1株ほど高まっていなかった。 以上を総合すると、Pten欠損下でInpp4bがヘテロで欠損した時は、増殖能、薬剤抵抗性が上昇し、メラノーマの悪性度が高まることがわかった。一方で、Inpp4bがホモで欠損すると、さらに増殖能や抵抗性が高まるという結果は得られなかった。このことは、Inpp4bがホモで欠損すると、何らかの代償機構が働くことを意味している。
|