最終年度において、それまでに蓄積できたdataの解析を進めた。皮膚、血中T細胞の多様性についてのT細胞受容体レパトア解析からは、50歳未満の検体において、採取した皮膚中のT細胞種類数:血中のT細胞種類数が約1:10であったのに対し、80歳以上の検体において、皮膚中T細胞種類数:血中T細胞種類数が約1:5であり、皮膚T細胞の多様性が、この解析系からは約2倍、血中T細胞より保たれやすいことが示された。また、同一面積当たりの皮膚T細胞数は、皮膚において増加傾向であり、また、個体間で共通するT細胞受容体型は、血中においては若年者、高齢者で増数しなかったが、皮膚において加齢に伴い増数する傾向がみられた。これらの結果から、皮膚T細胞がおそらく皮膚特有の抗原に応答して皮膚に分布し、血中T細胞より長期生存することが推測された。皮膚、血中T細胞の抗原応答能の変化については、黄色ブドウ球菌、カンジダ抗原いずれに対しても血中T細胞のIL-17産生の低下が認められたが、皮膚においては、抗原刺激がない状態ではIL-17産生低下がみられたものの、抗原刺激に応答したIL-17産生はCD4、CD8分画共に保たれていることが分かった。従って、高齢者皮膚T細胞は、皮膚に曝露されうる抗原に対しての応答能を維持できていることが判明した。これらの結果から、皮膚T細胞は加齢に伴い多様性を失わずに皮膚に長期間生存し、抗原曝露に対しても正常な応答能を呈するポテンシャルを保ち続けていることが結論付けられた。
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