褥瘡の発生直後は急性炎症反応によって紅斑や紫斑を呈する。組織壊死が進行し皮膚潰瘍が出現するまでの紅斑や紫斑の時期を「急性期褥瘡」と呼ぶ。急性期褥瘡を発見した時点ではエビデンスのある治療法は確立されていない。急性期褥瘡の機序を明らかにし、組織障害の進行を防ぐ治療法を開発できれば、画期的な褥瘡治療・予防法が期待できる。我々はマグネットを使用し皮膚を圧迫して褥瘡を発生させる急性期褥瘡マウスモデルを用いて、分泌蛋白質MFG-E8や間葉系幹細胞 (MSC)の局所注入が褥瘡の発生を抑制することと機序を見出してきた。本研究では、MSC由来エクソソームによる急性期褥瘡の治療効果、及びその制御機構について検討した。我々は皮膚虚血再灌流障害による皮膚潰瘍の大きさがMSC由来エクソソームによって縮小されることを見出した。さらに、酸化ストレス障害関連因子の発現にも影響を与えることを明らかにし、MSC由来エクソソームによるマウス褥瘡の改善効果の機序に酸化ストレス障害の改善が関わっていることが示唆された。また、MSC由来エクソソームが有するMFG-E8の役割についても検討を進めている。これまでは、せっかく皮膚潰瘍に至る前の褥瘡を早期に発見することができても、残念ながら、潰瘍になるまで観察していく以外に全く方法がなかったが、今回の成果によって、圧迫による潰瘍の発生を予防、抑制する治療を開発できれば、患者のQOL向上、医療費や人件費、労働量の削減につながる
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