研究課題/領域番号 |
18K08297
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
村田 暁彦 鳥取大学, 医学部, 助教 (90624221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 皮膚局所の免疫記憶 / 組織常在性記憶T細胞 / アトピー性皮膚炎 / 接触過敏症 |
研究実績の概要 |
炎症を経験し治癒した皮膚にはCD4+及びCD8+の組織常在性記憶T細胞(Tissue resident memory T cells: TRM)が長期間留まり、皮膚局所の免疫記憶(Local SKin Memory: LSM)を形成することで、抗原感受性の上昇と抗原再暴露時の強い炎症反応(LSM反応)を生じさせることが分かっている。 本年度、CD4+及びCD8+TRMのどちらがLSM形成に重要かを検討した。T/B細胞の欠損のためLSMが形成されないSCIDマウスにCD4+又はCD8+細胞を除去した野生型マウスの皮膚所属リンパ節細胞を移植し免役すると、どちらの細胞を欠損していてもLSM反応が回復したことから、CD4+又はCD8+TRMのどちらか一方のみでLSMが形成されることが示唆された。同様の結論が、LSMを欠損するT細胞受容体Tgマウス(BALB/c-DO11.10)への単離したCD4+又はCD8+T細胞の移植実験、及び、野生型BALB/cマウスへの抗CD4又はCD8抗体の投与によるT細胞除去実験でも得られた。よって、形成されたLSMを無くし抗原感受性の上昇を元に戻すためには、CD4+及びCD8+TRMの両方を皮膚から取り除く必要があることが分かった。 更に、活性化したTRMから放出されるサイトカインを同定するため抗原再暴露後の皮膚全体のmRNAを解析したところ、早期(1.5h)にIFNgの発現が著しく亢進し、TNFやIL-4の発現も亢進した。遅れて(3h)、IL-1b, IL-9, IL-22, CXCL1/2等が亢進した。よって、TRMは主にIFNgの放出を通じてLSM反応を生じさせると考えられた。これを証明するために抗原再暴露と同時にIFNgの中和抗体を投与する実験を行ったがLSM反応は抑制されず、TNF等の他のサイトカインもLSM反応に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り実験を行い、CD4+とCD8+TRMのリダンダンシーが明らかになり、抗原再暴露時のサイトカインの経時的な発現変化からLSM反応の分子機構の一連の流れが見えてきた。LSM反応の最上流に位置するTRMから放出され引き金となるサイトカインを同定するためには、中和抗体を用いた阻害実験でLSM反応を抑制できることを示さなければならないが、最有力と考えていたIFNgの抑制のみでは不十分なことが分かり、現段階では発現解析以上の結論を得られていない。サイトカイン(IFNgとTNF)にもリダンダンシーが存在する可能性があり、当初の計画通りにはこの点を解決できていない。
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今後の研究の推進方策 |
LSM反応を生じさせる分子機構を特定するため、IFNgの中和抗体に加え同時にTNF等も中和し、LSM反応を抑制できるか検討する。また中和抗体だけで無く、IFNgやTNFシグナルの下流分子(JAK1/2, NF-kB)の化学阻害剤を用いることでも検討する。また次年度の計画通り、TRMを皮膚から除去するために脂質代謝阻害剤等の種々の化学抑制剤を継続的に皮膚に塗布または投与する。TRMを除去しLSMを解消することができるか検討する。
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