研究課題
本研究は、蕁麻疹の病態を解明するため、血管内細胞培養シートの電気的なインピーダンスを測定する血管透過性評価システムを用い、ヒスタミンと相乗的に作用して血管透過性を亢進させる自然免疫活性化物質および炎症性サイトカイン等の内因物質を探索する。また、ヒスタミンが血液凝固経路を介して皮膚マスト細胞を活性化するための機序を細胞内情報伝達経路を含めて解析し、さらに、培養血管内皮細胞シートに好塩基球または他の単核球、および皮膚マスト細胞を共培養してより生体に近い条件で血管透過性亢進を評価できるin vitro蕁麻疹モデルを構築する。これらを踏まえ、各種蕁麻疹治療薬と膨疹誘発刺激の影響を評価する。昨年度までの研究で、蕁麻疹の病態をリアルタイムに評価、解析するための血管内皮細胞培養シートインピーダンスセンサーと血漿より構成される膨疹形成モデルを構築し、ヒスタミンと相乗的に作用して血管透過性亢進を起こす活性物質としてLPSに他にTNFα、また、ヒスタミンに代わる物質としてVEGFを同定した。本年度は、末梢血単球が組織因子(TF)を発現し、血管内皮細胞に発現したTFと同様血管透過性亢進をもたらし得ることを証明した。また、慢性蕁麻疹患者血漿では凝固系反応の潜在力が亢進している状態にあることに着目し、一箇所で起きたマスト細胞の活性化が血液凝固反応を介して次々とマスト細胞の活性化が波及していく現象を数学的数理モデルで表すことを試み、in silicoでの蕁麻疹モデルを形成することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
血管内皮細胞の組織因子(TF)発現を起こすヒスタミンおよびLPSの役割において、各種阻害薬、および代替え活性化試薬を用いた検討を行い、各々の受容体活性化を伝達する細胞内情報伝達経路の概要を明らかにし、これらの細胞伝達系路を共有する他の内因性活性物質によっても同様の血液凝固反応を介する血管透過性亢進が起こることを明らかにした。これらの反応は、蛋白阻害薬およびプロテアーゼ活性化受容体阻害薬により抑制されることを証明し、新規蕁麻疹治療薬の標的としての有用性を示した。また、単球に発現するTFは血管内皮細胞とは異なる制御を受けることが明らかとなり、蕁麻疹の病態に多様性があることを明らかにした。膨疹の数理モデルの開発は、当初予定していた以上の進展が得られ、本年度終わりには論文として発表された
実臨床における蕁麻疹治療への反応性には個人差が大きく、また病型によってもその程度には違いがある。また、臨床的にLPSが関与すると考えられる例は限られており、実際には様々な刺激または状態がLPSに代わり血管内皮細胞の組織因子発現を誘導していると考えられる。我々は、本研究を通して血管内では血管内皮細胞以外に単球が組織因子を発現し得ることを見出し、さらにその反応を数理モデルで模倣できることを報告した。今後は、これまでに見出した各種血液凝固系活性化因子の組み合わせ効果とその制御方法を検討するとともに、これまで報告されていない、活性化血液凝固因子による皮膚マスト細胞の活性化をin vitroで証明し、その制御機構を探索する。また、臨床的に慢性蕁麻疹に対する有効例が報告されているワルファリン等の抗凝固薬および抗IgE抗体(オマリズマブ)の効果と作用機序を、本研究における蕁麻疹モデルを用いて解析する。
すべて 2020 2019
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