研究実績の概要 |
申請者等は本研究課題で、同一個体の体幹と足底皮膚での遺伝子発現の違いを、トランスクリプトーム解析により網羅的に検討した。獲得免疫を担う樹状細胞の一つであるランゲルハンス細胞は、ランゲリンとCD1aの RNA発現量から足底では体幹皮膚の1/26と1/18に減少していることが確認できた。逆に足底皮膚に豊富に分布する樹状細胞が存在することも CD膜抗原の発現量の定量により明らかにできた。自然免疫を担う抗菌ペプチドでるS100A8/S100A9や、Dermcidinは、足底では体幹より10倍以上と高発現していた。これらは、皮膚マイクロバイオームの部位による差異を説明する事象であると思われる。掌蹠の皮膚の厚さ、中でも角層の肥厚を説明しうる特異的な角化機序としては、セリンプロテアーゼである Kallikrein-related peptidase (KLKs)と、これを可逆的に阻害する Kazal型セリンプロテアーゼインヒビター(SPINKs)、不可逆に阻害するセルピンスーパーファミリー(SERPINs)がある。各遺伝子群の発現バランスによって掌蹠型の角化が調節されると考えられる。体幹と足底の皮膚では15種の KLKsのうち、KLKs活性化カスケードのイニシエーターである KLK5を含め KLK7, KLK8, KLK9, KLK11の5種類が高発現していた。KLKsの発現は足底皮膚では体幹部と比較し総体的に低下していた。SERPIN型インヒビターとしては、長島型掌蹠角化症の原因遺伝子であるSERPINB7の発現には体幹と掌蹠で差はみられなかった。しかしながら SERPINB3, B4, B12,B13は体幹よりも足底で数倍~10数倍高発現していることが確認できた。
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