研究実績の概要 |
本研究課題は、同一のヒト個体での体幹と足底皮膚での遺伝子発現の違いを、多数検体でのトランスクリプトーム解析を網羅的に統計解析することで、ヒトの皮膚の各部位に様々な皮膚の形態の違いを明らかにすることを目標とした。平成30年度は、足底の皮膚の獲得免疫と自然免疫の特徴に着目し、ランゲルハンス細胞の細胞密度が、足底では、躯幹の10-20分の1に減少していることを、CD1aやランゲリン遺伝子の発現の減少より理解した。昨年度は形態学的に、足底に皮膚は有棘層、顆粒層、角層共に厚い。HE染色でのエオジンの染色性の違いに診られる様に、K9の発現に代表されるケラチン発現など角化の方向性の相違が何であるのかを検討した。 そこで、今年度は掌蹠の皮膚の厚さ、中でも角層の厚さを説明しうる特異的な蛋白発現としては、セリンプロテアーゼである Kallikrein-related peptidase (KLKs)の一群と、これを可逆的に阻害する Kazal型セリンプロテアーゼインヒビター(SPINKs)、不可逆に阻害するセルピンスーパーファミリー(SERPINs)の同位体群が皮膚に発現する。体幹と足底の皮膚では15種の KLKsのうち、KLKs活性化カスケードのイニシエーターである KLK5, 7, 8, 9, 11の5種類が高発現していた。KLKsの発現は足底皮膚では体幹部と比較し総体的に低下していた。SERPIN型インヒビターとしては、長島型掌蹠角化症の原因遺伝子であるSERPINB7の発現には体幹と掌蹠で差はみられなかった。しかしながら SERPINB3, B4, B12,B13は体幹よりも足底で数倍~10数倍高発現していることが確認できた。 これらのKLK, SERPIN, SPINK蛋白の発現の組み合わせにより、躯幹型のバスケット型の角層、掌蹠型の厚い稠密な角層などが形成されると考えた。
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