本研究は、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー性皮膚疾患の病態形成におけるToll様受容体(TLR)-interferon regulatory factor 3(IRF3)シグナル-表皮由来サイトカイン(IL-33・TSLPなど)を介した機序を明らかにすることが目的である。具体的には、TLR3とTLR4シグナルの転写因子として知られているIRF3ノックアウトマウスを用いた急性および慢性アレルギー性皮膚炎の解析を行った。マウス耳介皮膚のハプテン単回あるいは1-4週間の反復塗布を行うことにより、急性接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎などの病態に類似した慢性アレルギー性皮膚炎を誘導するマウスモデルを用いて検討した。その結果、IRF3-欠損マウスでは野生型マウスに比べて、急性および慢性アレルギー性皮膚炎および刺激性皮膚炎での皮膚の炎症反応(耳介の腫脹、組織学的所見など)が有意に増大することを見出した。また、皮膚刺激物質塗布による非アレルギー性皮膚炎においても、IRF3-欠損マウスでは野生型マウスに比べて、皮膚の炎症反応(耳介の腫脹、組織学的所見など)が有意に増大した。さらに、IRF3-欠損マウスでは、表皮の一部のサイトカイン産生が、野生型マウスに比べて、増大していることを解明した。以上の結果より、IRF3シグナルは、アレルギー性および非アレルギー性の皮膚の炎症において制御する役割をもつ可能性が考えられた。
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