水疱性類天疱瘡患者IgG(BP-IgG)を正常ヒトケラチノサイト(NHEK)に投与した際のサイトカインの動態を研究した。 前年度までに明らかにしたBP-IgG刺激時のNHEK上清のIL-8とGM-CSFの上昇がCa2+依存性かを評価するため、0.06 mM Ca2+と1.8 mM Ca2+の2条件でIL-8とGM-CSFの濃度を測定した。結果、低Ca2+条件下ではBP-IgG刺激下でIL-8とGM-CSFの濃度上昇が認められた一方、高Ca2+条件下ではBP-IgG刺激の有無でIL-8とGM-CSFの濃度は変わらなかった。次に、低Ca2+でnormal-IgG刺激(lowCa-nIgG)、低Ca2+でBP-IgG刺激(lowCa-BPIgG)、高Ca2+でnormal-IgG刺激(highCa-nIgG)、高Ca2+(highCa-BPIgG)でBP-IgG刺激の4条件でRNA sequenceを行った。その結果、lowCa-BPIgG とlowCa-nIgGの比較で、GM-CSF (CSF2) のmRNA発現量は約1.6倍と増加する一方、IL-8 (CXCL8) のRNA発現量はほぼ不変であった。 highCa-BPIgG とhighCa-nIgGの比較では、CSF2、CXCL8ともにmRNA発現量は減少していた。 以上より、NHEK上清のIL-8の濃度上昇には、分解抑制などの機序が関与していると考えた。 その他に、lowCa-BPIgG とlowCa-nIgGの比較で増加しているmRNAとして、COL3A1、LUMやIL6などを、またlowCa-BPIgG とlowCa-nIgGの比較で減少しているmRNAとして、TPTEP2-CSNK1E、NDUFC2-KCTD14、RORAなどを検出した。 今後、これらの遺伝子を標的とすることで類天疱瘡の炎症をコントロール出来る可能性がある。
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