研究課題/領域番号 |
18K08306
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
菅原 弘二 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50634078)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ストレス / 肥満細胞 / 円形脱毛症 / カンナビノイド |
研究実績の概要 |
我々は、難治性皮膚疾患である円形脱毛症の病態にアレルギー関連疾患で重要な役割を担っている細胞である肥満細胞が関与していることを報告した。肥満細胞はストレス応答に重要な役割を担っていることがすでに報告されている。以前我々のグループはストレス関連ホルモンであるcorticotropin releasing hormone(CRH)がヒト毛包周囲に存在する肥満細胞の脱顆粒を促進し、分化も誘導させることによって毛包周囲の同細胞の数も増やすことをヒト毛包組織培養系を用いた研究で証明した。このことは、ストレス状態下で、CRHの発現が上昇し、その影響下で肥満細胞が活性化する病態が存在することを示唆する。実際、皮疹部での肥満細胞数が増加する皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎では、ストレス刺激で痒みが誘導され、皮疹自体も悪化することが知られている。この系はストレスで円形脱毛症が悪化する現象にも関与している可能性がある。 我々は、上述のCRH以外に、ヒト体内の様々な組織の恒常性を維持する上で重要な役割を担っているとされる内因性カンナビノイド機構が肥満細胞を抑制的にコントロールすることもヒト組織培養系を用いた研究で報告してきた。ただ、この内因性カンナビノイド機構がストレス状況下でどのような影響を受けているのかに関しては解明されていない。 我々は、今回の一連の研究にて拘束ストレスモデルマウスを用いた研究にて、皮膚の肥満細胞の脱顆粒が、対照群に比較してストレス負荷群では有意に促進している結果を得ており、さらに肥満細胞の数自体もストレス負荷群で有意に増加している結果を得ている。このモデルマウスを用い、ストレス関連ホルモンや内因性カンナビノイド機構がどのような影響を受けているのかの研究を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、我々は拘束ストレスモデルマウスの作成に成功し、拘束ストレス自体が円形脱毛症の病態に関与する肥満細胞の脱顆粒を促進し、その数を増加させる結果を得た。これは、ストレス負荷が円形脱毛症の病態に関与していることを示唆する。 次に、我々は拘束ストレスモデルマウスのストレスホルモン状態を評価するべく、血中のcortisolおよびCRH(CRF)の濃度を測定した。その結果、ストレス負荷群では、同ホルモンは対照群に比較して有意に上昇している結果が得られた。さらに、CRF遺伝子レベルもストレス負荷群マウス皮膚内で上昇する結果が得られた。これらは、ストレス負荷により、ストレスホルモンであるCRFの血中および皮膚での発現量が増加し、そのため肥満細胞の活性化が誘導すされるシステムが存在することを示唆する。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ストレス負荷モデルマウス血中および皮膚内での肥満細胞抑制因子である、内因性カンナビノイド含有量がどのように変化するのかを研究する予定。 さらに、今までの研究で確認された諸現象が、実際のヒトの皮膚でも認められるのかを、脱毛症患者の確定診断で用いた病理組織切片等を用いて検討する。それ以外にヒト皮膚や粘膜を用いた組織培養系を用い、ストレス関連ホルモンであるCRHやACTHなどを添加し、組織内の肥満細胞の脱顆粒、分化、増殖能などを免疫組織化学的に評価する予定。さらに、培養組織内に存在する内因性カンナビノイドやその受容体であるCB1の発現に関しても評価を行う予定。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の物品費として計上していた、培養液や各種免疫組織化学用抗体などの使用量が予想よりも少なかったため。次年度は組織培養等の頻度が増加することが予想されるため、問題ないと考える。
|