最初に、全身性強皮症やその他の皮膚線維化疾患の皮膚組織からRNAを抽出し、過去にヒトで報告数が多い環状RNAの中から、皮膚線維化疾患の病変部皮膚で特異的に発現変化しているものをreal-time PCRを用いての同定を試みたが、正常皮膚との間に有意差を得ることができなかった。そこで強皮症皮膚由来の培養線維芽細胞を用いてアレイを行なった。 アレイの結果、正常線維芽細胞に比べて強皮症線維芽細胞で発現が変化しているもののうち、ある環状RNA(X)に注目した。 環状RNA(X)は強皮症線維芽細胞においてアレイで増加しており、real-time PCRでもその発現と環状RNA/linear RNA比が増加していることが確認された。 一方、正常線維芽細胞において環状RNA(X)をレンチウィルスを用いて強制発現させたところ、I型コラーゲンやCTGFの蛋白発現が抑制された。mRNA発現は変化しなかったためpost-transcriptionalな変化と思われた。 次に、血清からRNAを抽出し、目的とする複数の環状RNAが実際に血清中にも発現しているかを少数のサンプルを用いてreal-time PCR にて確認を試みたが、増幅はみられず、我々の実験系では血清中の環状RNAの検出はできなかった。 よって我々の目的とする皮膚線維化関連環状RNAは組織中で機能性を有する可能性はあるが、一方で血液中のバイオマーカーとしての有用性は低い可能性があることを確認できたと考える。これは、他のnon-coding RNAに比べて血清中の環状RNAの解析を行った論文が比較的少ないことに合致する結果である。 その後、線維化モデルマウスでのin vivoにおける線維化関連作用の検討のために環状RNA(X)のsiRNAの作成を試みており、よりよい発現抑制効率を有するsiRNA配列を比較検討している。
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