研究課題/領域番号 |
18K08310
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
荒尾 知子 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (80397629)
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研究分担者 |
久保 亜紀子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50455573)
久保 亮治 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70335256)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CHILD症候群 / コレステロール合成 / 乾癬様皮膚炎 / モデルマウス |
研究実績の概要 |
皮膚の表皮は、肝臓と並ぶ脂質産生器官であるという特異性を持つ。表皮角化細胞から産生される内因性のセラミドやコレステロールなど皮膚のバリア機能や恒常性を維持するために不可欠である。X連鎖優性疾患であるCHILD症候群(Congenital hemidysplasia with ichthyosiform erythroderma and limb defects)は、末梢コレステロール生合成経路の異常症である。生後数週より、一部の皮膚に紅斑、角化、落屑を伴う魚鱗癬様もしくは乾癬様の皮疹が見られ、次第に拡大した後に縮小し、最終的に片側性に固定する。コレステロール代謝酵素であるNSDHL変異により酵素活性が低下し、上流の中間代謝物の蓄積と最終生産物であるコレステロールの生合成低下が皮膚症状発現に寄与していると考えられるが、皮疹部における内因性のコレステロール中間代謝物と皮膚炎発症のメカニズムについての詳細な検討は未だ行われていない。そこで、申請者らはCHILD症候群モデルマウスとして、表皮特異的NSDHLコンディショナルノックアウトマウス (K5-Cre-NSDHLflox/WT)を作成した。既にPCRを用いたジェノタイピング確認を終了している♀K5-Cre-NSDHLflox/WTについて、表現型の解析を行う。現在の皮膚所見として一部脱毛斑を散在して認めており、今後、有毛部、脱毛部とWTを比較検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、2020年3月からCOVID-19流行のため、緊急事態宣言が出されマウス飼育施設との往来も制限され、マウスを用いた解析に支障をきたした。緊急事態宣言解除後から研究を再開している。
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今後の研究の推進方策 |
表皮特異的NSDHLコンディショナルノックアウトマウス (K5-Cre-NSDHLflox/WT)の表現型解析 ①組織学的な検討:既にPCRを用いたジェノタイピング確認を終了している♀K5-Cre-NSDHLflox/WTについて、表現型の解析を行う。皮膚所見として一部脱毛斑を散在して認めており、有毛部および脱毛部の皮膚を採取し、皮膚の肥厚・菲薄化、角層の状態、毛の構造異常、皮膚炎の有無についてWTのマウス皮膚と比較して組織学的に検討する。表皮の分化・増殖に関する評価のため、インボルクリン、ロリクリンなどの免疫染色を行う。 ②皮膚炎症の検討:マウス皮膚切片を用いてT細胞マーカー(CD3, CD4, CD8, IL-17など)、B細胞マーカー(CD20など)の免疫染色を行う。炎症細胞浸潤が著明な皮膚病変については、皮膚組織に浸潤している細胞のFACS解析を行い、末梢血の解析結果と比較検討する。また、血液中のサイトカインプロファイルについて、皮膚炎との関連が報告されているTNF-a、IL-6、IL-17などについてELISAを用いて検討する。 ③遺伝子発現プロファイリングおよび脂質プロファイリング:有毛部および脱毛部の皮膚を採取後、表皮および真皮に分離し、ガスクロマトグラフィー(GC-MS)にて脂質の解析を行い、コレステロール代謝物について詳細に検討する。K5-Cre-NSDHLflox/WTマウスは表皮特異的にNSDHLをノックアウトしていることから、表皮で内因性に合成されるコレステロールとその中間代謝物が皮膚炎の原因になっていると予想され、これらについてWTと比較検討し、皮膚炎を惹起する原因となるコレステロール中間代謝物を特定する。また、表皮および真皮のtotal RNAを回収し、RNAseqにて遺伝子プロファイルを検討することで、表皮由来の皮膚炎症のメカニズムを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月末からのCOVID-19流行に伴う研究施設への入館制限により、研究計画に遅れが生じ、次年度への繰り越しを申請した。2021年度に2020年度も含めた研究を引き続き継続して行う。
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