研究課題/領域番号 |
18K08312
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
星野 仁彦 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (20569694)
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研究分担者 |
深野 華子 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 研究員 (40807541)
酒井 香奈江 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命助教 (60599447)
吉田 光範 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 研究員 (70772630)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 病原性 / プラスミド / 全ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
我々は日本でのブルーリ潰瘍原因菌であるM.ulcerans subsp. shinshuenseを通常の継代培養を繰り返し、固形培地上に色調が黄色と白色の二種類の菌株が混じっていることを見出した。両者は生育速度や薬剤感受性などの一般生化学検査においては相違を認めなかったが、二種類の菌株をsubcloning後全ゲノム核酸シーケンスを行い、比較ゲノム解析を行った。その結果白色の菌株は、病原性脂質であるmycolactoneを産生する巨大プラスミドを欠失していることを見出した。黄色の菌株が野生株であった。両株をマウスの足底に注射すると、黄色の色調を持つ株、すなわち巨大プラスミドを所有している菌を打たれたマウスのみが8週以内に全匹とも死亡した。ところが白色菌株ではマウスは一匹も死ななかった。つまり通常の継代培養操作で、M.ulcerans subsp. shinshuenseの病原性が著しく低下した菌株を作成したことになり、今後この菌株セットはブルーリ潰瘍の病原性評価などに大変役に立つことが予想される。これらの結果をまとめたものを"Naturally occurring a loss of a giant plasmid from Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuense makes it non-pathogenic"として Nature Scientific Reports誌に発表した。 またM.ulceransなどのmycolactone生成抗酸菌の共通の祖先と言われるM. marinumの基準株のcomplete genome配列を決定して、Genome Announcements誌に発表した。この結果は今後の比較ゲノム解析に重宝されることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病原性の減弱した菌株を分離することができ、比較ゲノムや病理組織解析などを行った研究成果をまとめた論文を刊行することができたため。また今までに自験例を入れても2株しか成功していない巨大プラスミドの全塩基配列を決定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
菌株のメチル化など、原因菌のメタゲノム解析を行う予定である。またマウスのフットパッドへ菌液を注入した感染モデルを用いて、宿主と病原体のRNA-Seqを同時に行い、両者の関連について解析を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、平成30年度分についてはほぼ使用済みである。
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