研究課題/領域番号 |
18K08319
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
桐戸 敬太 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90306150)
|
研究分担者 |
川島 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20622369)
三森 徹 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (80377514) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ERストレス / ATF4 / MMP / TIMP |
研究実績の概要 |
これまで、JAK2V617F変異を有する骨髄増殖性腫瘍(MPN)細胞(HELおよびSET-2)において、(1)PERK-eIF-2a-ATF4, IRE-1-XBP1および PERK-ATF-6などの小胞体ストレス応答経路が過剰に活性化されていること、(2)その下流において、骨髄線維化を引き起こす候補分子として、シャペロンタンパクGRP78の存在を明らかにした。今回は、さらに小胞体ストレス経路の活性化により、細胞外マトリクスのホメオスタシスに関連するMMP(Matrix metalloproteinase)ファミリーおよびその制御分子であるTIMP(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase )ファミリー分子の異常発現がもたらされていることを明らかにし得た。(1)MMPファミリー分子遺伝子のプロモーター上には、ストレス応答転写因子ATF-4の結合領域が存在する。このため、小胞体ストレス応答経路の中でも、PERK-eIF2α-ATF4経路がMMPの発現調整に関わることを予想した。実際に、PERK阻害剤を用いることによりATF4およびMMPの発現が低下していた。(2)TIMPについては、そのプロモーター上にはSTAT3の結合領域が存在する。そこで、JAK阻害剤を用いてSTAT3の活性化を抑制したところ、TIMPの発現が抑制されることがわかった。(3)AMPK活性化剤である、MetforminはJAKおよびPERKの双方の活性化を抑制することにより、MMPとTIMPの両者の発現を抑制した。これらの結果からは、MPN細胞における小胞体ストレスは、直接的に細胞外マトリクスのホメオスタシスの制御に関与し、組織線維化に関わることが推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、MPN細胞における過剰な小胞体ストレス経路により制御され、骨髄線維化に関わる分子としてGRP78を想定していた。過剰なGRP78により、骨髄での線維芽細胞の増殖や TGFβシグナルの増強が骨髄線維化に関わると考えていた。今回の研究により、MPN細胞における小胞体ストレスは、MMPおよびTIMPといった、細胞外マトリクスの代謝を制御する分子の発現制御を介して、より直接的に骨髄線維化に関わっている可能性が示された。すなわち、当初の計画以上に成果が得られている。上記研究結果については、令和2年度10月に開催される第81回日本血液学会学術集会において発表を予定している。また、同年12月に米国 San Diegoで開催される第62回米国血液学会においても、発表することを計画中である。また、これまでに明らかにした研究内容とあわせ、令和3年度には国際的な専門誌への論文投稿を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果とあわせ、MPN細胞において過剰に活性化している小胞体ストレスは、(1)シャペロンタンパクGRP78の過剰発現/細胞外への放出に伴い、周囲の線維芽細胞でのTGF-β経路の過剰活性化がもたらされること、(2)MPN細胞そのものより、MMPやTIMPなど細胞外マトリクス調整に関わる分子の過剰産生が起こること、の2つの機序により骨髄線維化が進行することが予測された。今後は、実際の症例の骨髄生検検体を用い、免疫染色などの手法によりこれらの分子の異常発現が認められるかについての検証を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、抗体や解析用試薬について使用量が予測より少なかったため次年度使用額が生じた。今後、解析に用いる検体が増えることから、これらの消 耗品の使用量が増加する計画であり、翌年度請求分とあわせて使用する予定である。
|