研究実績の概要 |
リンパ腫病変の主座となるリンパ節には細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte, CTL),制御性T細胞(regulatory T cell, TREG),濾胞性ヘルパーT細胞(T follicular helper cell, Tfh),濾胞性樹状細胞(follicular dendritic cell, FDC)など様々な免疫系細胞が存在している.近年の研究によって,リンパ腫細胞はこれらの細胞から生存や抗がん剤抵抗性に有利な分子シグナルを受け取っていることが示されている.つまり,リンパ腫の病態には,リンパ腫細胞の遺伝子変化やリンパ腫細胞とその周囲環境との相互作用(cell-cell interaction)が関与していると考えられる.本研究課題では,リンパ腫由来リンパ節の間質細胞の特性を解析し,間質細胞を標的とした薬物治療のrationaleを得ることで新たなリンパ腫治療戦略の基盤開発を視野においた検討を行う.リンパ腫由来リンパ節から単離した細胞の中には,CD90などの間葉系間質細胞(mesenchymal stromal cell,MSC)に発現する表面マーカーを有する細胞集団が存在することをflow cytometry法で確認した.これらの細胞をin vitroで拡大培養しさらなる解析に供した.その結果,特殊な培養条件下で分化誘導をすると,多系統への分化能を示すことを組織化学的評価法によって観察した.さらに,これらの細胞はin vitroでcolony形成能を示した.以上の検討結果より,リンパ腫由来リンパ節には間葉系間質細胞(MSC)の性質を満たす細胞集団が存在することが示唆された.
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