| 研究実績の概要 |
リンパ腫病変の主座となるリンパ節には様々な免疫系細胞が存在している．それらには，細胞障害性T細胞（cytotoxic T lymphocyte, CTL），制御性T細胞（regulatory T cell, TREG），濾胞性ヘルパーT細胞（T follicular helper cell, Tfh），濾胞性樹状細胞（follicular dendritic cell, FDC）などが知られている．近年の研究によって，リンパ腫細胞はこれらの細胞から生存や抗がん剤抵抗性に有利な分子シグナルを受け取っていることが示されている．つまり，リンパ腫の病態には，リンパ腫細胞の遺伝子変化だけではなくリンパ腫細胞とその周囲環境との相互作用が関与していると考えられる．本研究課題では，リンパ腫由来リンパ節に存在する間質細胞の特性を解析し，新たなリンパ腫治療戦略の基盤開発を視野においた検討を行う．リンパ腫由来リンパ節に存在する，間葉系間質細胞（mesenchymal stromal cell，MSC）の性質を満たす細胞集団からmRNAを抽出し，網羅的遺伝子発現解析を行った．その結果，これらの細胞は対照細胞集団と比較して異なる遺伝子発現プロファイルを示し，いくつかの遺伝子ファミリーの発現レベルが極端に変化していることが明らかとなった．さらに，間葉系間質細胞とリンパ腫細胞のin vitro共培養実験を行ったところ，リンパ腫細胞の増殖が維持されることが観察された．以上の検討結果より，リンパ腫由来リンパ節に存在する間葉系間質細胞は特徴的な性質を有し，リンパ腫細胞に対する影響を有することが示唆された．
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