研究実績の概要 |
リンパ腫病変の主座となるリンパ節には様々な免疫系細胞が存在している.それらには,細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte, CTL),制御性T細胞(regulatory T cell, TREG),濾胞性ヘルパーT細胞(T follicular helper cell, Tfh),濾胞性樹状細胞(follicular dendritic cell, FDC)などが知られている.近年の研究によって,これらの細胞はリンパ腫細胞の生存や抗がん剤抵抗性に有利な腫瘍環境(tumor microenvironment)を構成していることが示されている.つまり,リンパ腫の病態には,リンパ腫細胞の遺伝子変化だけではなくリンパ腫細胞とその周囲環境との相互作用が関与している.本研究課題では,リンパ腫由来リンパ節に存在する間葉系間質細胞の特性を解析し,新たなリンパ腫治療戦略の基盤開発を視野においた検討を行う.リンパ腫由来リンパ節組織に存在する間葉系間質細胞を含むCD19陰性細胞集団が発現する遺伝子を,マイクロアレイ法を用いて検討した.その結果,ヒト正常骨髄由来間葉系間質細胞を対照として,複数の検体で共通して低発現の遺伝子が22個同定された.そのうちの一つの分子に焦点を絞り定量的PCR法とウエスタンブロッティング法によって低発現を確認した.本遺伝子を,リンパ腫由来リンパ節組織に存在する間葉系間質細胞を含むCD19陰性細胞集団に遺伝子導入実験によって強制発現したところ,population doublingの回数が減少し,telomerase reverse transcriptaseの発現が低下した.以上の検討結果より,リンパ腫由来リンパ節に存在する間葉系間質細胞はヒト正常骨髄由来間葉系間質細胞と異なる細胞増幅性質を有することが示唆された.
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