研究実績の概要 |
リンパ腫病変の主座となるリンパ節には様々な免疫系細胞が存在している.それらには,細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte, CTL),制御性T細胞(regulatory T cell, TREG),濾胞性ヘルパーT細胞(T follicular helper cell, Tfh),濾胞性樹状細胞(follicular dendritic cell, FDC)などが知られている.近年の研究によって,これらの細胞はリンパ腫細胞の生存や抗がん剤抵抗性に有利な腫瘍環境(tumor microenvironment)を構成していることが示されている.リンパ腫由来リンパ節組織からfluorescence-activated cell sorting法を用いてリンパ腫細胞を含むCD19陽性細胞集団を分離した.また,CD19陰性細胞集団を分離し,間葉系間質細胞を拡大培養した.これらで得た細胞をco-cultureすると,リンパ腫細胞の増幅が維持される.一方で,化合物ライブラリーを利用したスクリーニングで得られた候補物質C13H13NnOnで間葉系間質細胞を薬物的に刺激し,同様のco-culture実験を行うとリンパ腫細胞の増幅が抑制された.この効果はco-culture アッセイ系にcell culture insertを用いるとキャンセルされた.以上のことから,この化合物は間葉系間質細胞の細胞表面分子の発現に影響を及ぼし,リンパ腫細胞との直接的な細胞-細胞間相互作用を制御することでリンパ腫細胞の増幅を抑制することが示唆された.
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