研究課題
臍帯血移植は、骨髄移植や末梢血幹細胞移植と比較し、移植片に含まれるCD34陽性細胞数は1/10程度と少数であるのにも関わらず、生着が得られる。また、HLA不適合抗原が3座6抗原のうち2抗原以内であれば、重症GVHDの発症リスクを増加させることなく実施可能であり、HLA適合ドナーが見出せない場合の、代替移植ドナーとして非常に有用である。しかし、臍帯血移植は他の移植ソースと比較し、感染症などの移植後早期の合併症の頻度が高いという問題点があり、その克服が必要である。各国において予後予測因子の解析が行われているが、欧米と日本では臍帯血移植の成績は異なるため、その結果の外挿性が障壁となっている。外挿性に関する問題点を解決するため、欧州骨髄移植学会および欧州臍帯血研究施設であるユーロコードと日本造血細胞移植学会・日本造血細胞移植データセンターとの共同研究基盤を確立した。そして、欧州および日本のレジストリーデータに収集されている臨床データの各項目を詳細に検討し、両レジストリーの急性白血病に対する臍帯血移植の統合データセットを作成した。統合した造血幹細胞移植のデータセットにおいて、患者と臍帯血のHLA適合度、臍帯血有核細胞数、各施設の移植経験数、性別、移植年代、GVHD予防法、その他、様々な背景因子が移植成績に及ぼす影響に関して解析を行い、両レジストリーデータの移植成績に影響を及ぼす因子の類似点、相違点を明らかにした。その結果をLeukemia誌に報告した。(Kanda J, Leukemia 2020 Jan;34(1):128-137.Epub 2019 Aug 14) また、欧州と日本の臍帯血移植成績の差の原因をさらに探索するため、GVHDが移植成績に及ぼす影響に関して、新たな研究計画を提案し、解析を開始した。
2: おおむね順調に進展している
欧州骨髄移植学会・ユーロコードと日本造血細胞移植学会の急性白血病に対する臍帯血移植データの統合データを用いて、各レジストリーデータ内で臍帯血移植成績に影響を及ぼす因子の比較を行い、HLA適合度や臍帯血有核細胞数が移植成績に与える影響に関してLeukemia誌に報告出来たことは評価に値する。
GVHDが移植成績に及ぼす影響に関して、新たな共同研究計画を提案し、承認を得た。現在、解析を施行し、非常に重要な知見が得られている。知見に関して、ユーロコードとWeb会議をすすめながら、研究を進めていきたい。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Bone Marrow Transplantation
巻: 55 ページ: 1430~1437
10.1038/s41409-020-0853-1
Biology of Blood and Marrow Transplantation
巻: 26 ページ: 509~518
doi: 10.1016/j.bbmt.2019.09.035
Leukemia
巻: 34 ページ: 128~137
doi: 10.1038/s41375-019-0534-5
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/190600_2.html