研究課題
本研究では、血小板機能の中核をなすインテグリンαIIbβ3(GPIIb-IIIa)の制御分子の同定、解析を目的としている。申請者らは、本研究においてすでにインテグリンαIIbβ3活性化の制御分子であるCalcium and diacylglycerol (DAG)-regulated guanine nucleotide exchange factor I (CalDAG-GEFI)の欠損例(世界4例目)の同定およびその機能解析に成功している(Blood 2016)。インテグリンαIIbβ3活性化はinside-outシグナルで制御され、ADPやトロンビンなど血小板アゴニスト刺激に始まり、CalDAG-GEFIによるRap1活性化、続いて起こるtalin、kindlin-3とβ3細胞内領域との結合が必須であると考えられている。今年度は、申請者らが本邦で初めて見出したkindlin-3欠損症に関して、詳細な検討を行った。症例は生後8か月の女児(両親はいとこ婚)で、新生児より広汎な皮下出血を呈していた。αIIbβ3の発現は正常であったが、その活性化は、ADP、PAR1など検討したすべてのアゴニストに対して高度に障害されていた。CalDAG-GEFIの発現は正常である一方、kindlin-3の発現が検出されなかった。kindlin-3の遺伝子解析より、277番のトリプトファン(TGG)が1塩基置換によりストップコドンに変異(TAG)して、完全欠損することが判明した。流動下における血小板血栓形成は、高度に障害されており、αIIbβ3が欠損している血小板無力症と比べても、より障害が強かった。好中球におけるLFA-1(αLβ2)活性化を検討すると、β2の活性化も障害されていることが明らかとなった。この成績よりkindlin-3がインテグリン活性化に必須の分子であることが示された
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