研究課題
TAK1やPim-2が骨髄腫細胞で過剰発現しているが、骨髄間質細胞などとの共存下でTAK1のリン酸化やPim-2発現がより亢進する。骨髄間質細胞との共存やIL-6などの刺激で骨髄腫細胞のTAK1が活性化すると、NF-κBが活性化し、その下流でSp1、TAK1 mRNAの発現が誘導されること、またこのようにして誘導される骨髄腫細胞のTAK1発現はNF-κBやSp1の阻害薬により抑制されることが示された。TAK1 siRNAの処理およびTAK1阻害薬の添加により骨髄腫細胞のTAK1 mRNAの発現が抑制されることから、骨髄腫細胞におけるTAK1 → NF-κB → Sp1 → TAK1というpositive feedback経路により、骨髄腫細胞ではTAK1の発現が大きく増幅していることが示唆された。また、骨髄間質細胞などの接着があると、骨髄腫細胞ではTAK1がリン酸化し、TAK1自身の発現とそのリン酸化が増幅し、その下流でp38MAPKやERKなどの情報伝達系を活性化し、これらの標的因子としてTAK1やPim-2が転写レベルで過剰発現していた。TAK1阻害により、骨髄腫細胞からのVEGFの産生が著明に抑制され、骨髄腫細胞に細胞死が誘導された。骨髄腫細胞の生存、増殖におけるTAK1の重要な関与が示された。また、骨髄腫患者の骨髄生検を用いた組織アレイを作成し、TAK1およびリン酸化TAK1の免疫染色を行った。腫瘍細胞のリン酸化TAK1の発現は進行とともに強くなり、リン酸化TAK1の発現程度と予後の逆相関の傾向が見られた。
2: おおむね順調に進展している
培養系の実験は予定通り進められ、骨髄腫細胞におけるTAK1-Pim-2経路の亢進の機序が明らかになった。患者検体でのTAK1およびリン酸化TAK1の免疫染色は市販の抗体での染色の条件の設定が難しかったが、50例弱の検討でリン酸化TAK1の発現レベルと予後の間の相関傾向がでた。標本間の免疫染色の条件の違いの問題を解消するために組織アレイを用い、検体間のリン酸化TAK1の発現の比較を行なったが、信頼性を高めるためにはWestern blotなど他の方法での評価と併せて慎重に評価すべきである。後ろ向きの解析であったため、現在の治療と異なる治療での予後の評価であるため、症例数を増やし新規薬での治療下での評価を行う必要があると思われる。
骨髄腫細胞でのTAK1の発現やリン酸化の亢進には、今回示した機序以外に脱リン酸化酵素の関与を示唆するデータが見出されたため、今後脱リン酸化酵素PP2Aやその阻害因子のCIP2Aなどの役割を詳細に検討する。骨髄腫細胞の骨髄間質細胞との接着による薬剤耐性や破骨細胞形成の促進作用がTAK1の活性化が関与すること、TAK1阻害により骨芽細胞分化が回復し破骨細胞形成が著明に減弱できることを示し、その分子機序を明らかにする。骨髄腫細胞からは貧血、骨病変形成、血管新生や免疫抑制など骨髄腫各種病態の形成や腫瘍進展に関わる液性因子が産生されているため、TAK1-Pim-2経路が制御する骨髄腫細胞が産生する分泌蛋白の探索し、その病態への意義やバイオマーカーとしての有用性を検証する。TAK1阻害薬(5Z)-7-oxozeaenolやPim阻害薬SMI16a(市販)の添加やTAK1およびPIM2 siRNAの処理の有無で、骨髄腫細胞およびその上清をプロテオーム解析で検討し、TAK1-Pim-2経路がもたらす骨髄腫各種病態の形成に関与する分泌蛋白を探索する。骨髄腫細胞との共培養、培養上清添加下で、破骨細胞や骨髄間質細胞におけるTAK1の活性化およびPim-2の発現、そしてTAK1 siRNAやTAK1阻害薬による破骨細胞分化および骨芽細胞分化に及ぼす影響やそれに関わる主要なシグナル経路を調べる。このようにして、骨髄腫細胞による骨髄間質細胞や破骨細胞系細胞のTAK1の活性化、およびその結果としての骨芽細胞および破骨細胞分化に及ぼす影響を明らかにする。
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