研究課題/領域番号 |
18K08331
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
越智 俊元 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (10571086)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 二重特異性抗体 |
研究実績の概要 |
本研究課題において、既存の抗体製剤を応用してがんに対する二重特異性抗体 (BsAb: bispecific antibody)を簡便に作製するためにB-BiTE (架橋型BiTE: Bridging-BiTE)を開発した。具体的には、CD3 epsilon鎖に対する抗体と、ヒト免疫グロブリンIgGサブクラス (IgG1-G4)を選ばず定常領域 (Fc)を特異的に認識する抗体の可変領域をもとにそれぞれ一本鎖抗体 (scFv)を作製し、2つのscFvをリンカー配列で連結してB-BiTEとした。これまでがん治療に用いられてきた既存の抗体に結合させることで、B-BiTE/抗体複合体を作製して、抗体製剤にBsAbの機能を賦与することを目的とした研究を行った。その結果、抗ヒトCD19抗体だけでなく、実臨床で用いられている抗ヒトCD20抗体 (Rituximab)、抗ヒトCD38抗体 (Daratumumab) に結合させてB-BiTE/抗体複合体を作製し、ヒト末梢血T細胞/NK細胞をin vivo/in vitroともに活性化し、抗体単剤と比較して抗腫瘍効果を高めることに成功した。すなわち、抗体の種類を選ばず、B-BiTEを用いてBsAbを簡便に作製できることを確認し、本手法の汎用性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗ヒトCD19抗体にB-BiTEを結合させたB-BiTE/CD19抗体複合体存在下において、ヒトT細胞、ヒトNK細胞がCD19陽性腫瘍細胞を特異的に認識し傷害することを確認した。 そこで、B-BiTEを実臨床で用いられている抗体製剤である抗ヒトCD20抗体 (Rituximab)、抗ヒトCD38抗体 (Daratumumab)に結合させ、各B-BiTE/抗体複合体を作製した。その結果、各B-BiTE/抗体複合体が、CD20陽性、CD38陽性腫瘍細胞に特異的に結合することを明らかにした。さらに、B-BiTE/抗体複合体存在下において、T細胞活性化シグナルを受けた末梢血T細胞が増幅すること、制御性T細胞の選択的増幅がないことを併せて確認した。また、ヒト未刺激末梢血T細胞/NK細胞が、各B-BiTE/抗体複合体存在下において、標的細胞を特異的に認識して各種サイトカインを産生し傷害することを明らかにした。 また、我々は、CD19、CD20、CD38陽性であるRaji細胞株に、luciferase遺伝子を導入したRaji/SLR細胞株を樹立し、NOD/Shi-scid/IL2RgKO Jicマウスに生着させ、CD20を標的としたin vivoモデル実験を行った。NK細胞とT細胞を経静脈的に投与して、Rituximab単剤、B-BiTE/Rituximab複合体を投与した。その結果、Ritiximab治療群と比較して、B-BiTE/Rituximab治療群において、抗腫瘍効果が高まることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
悪性リンパ腫患者由来の末梢血T細胞/NK細胞、腫瘍細胞を用いたトランスレーショナルリサーチを行い、B-BiTE/抗体複合体による抗腫瘍効果を詳細に検討する。また、本技術を、固形がんを標的とした抗体製剤にも応用する。具体的には、実臨床で用いられている抗体製剤にB-BiTEを結合させて、B-BiTE/抗体複合体を作製する。本複合体存在下において、ヒトNK細胞とT細胞とがともに活性化し、固形がんに対する抗腫瘍効果が高まることをin vitroで確認する。また、NOD/Shi-scid/IL2RgKO Jicマウス皮下に固形がん細胞株を生着させたマウスモデルを作製する。NK細胞とT細胞を経静脈的に投与した後、抗体単剤、B-BiTE/抗体複合体を投与して、in vivo抗腫瘍効果を比較検討する。一方で、ヒト免疫グロブリン製剤にB-BiTEを結合させたB-BiTE/IgGを作製し、ポリクローナルなIgGとB-BiTEが体内で結合した場合でもヒト由来の正常細胞に影響がないことを確認する。
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