研究課題
昨年度に引き続き、ドイツのLeibniz-Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell CulturesでIllumina HiSeq2500により解析が行われた造血器腫瘍細胞株100株のRNAシーケンスデータを解析した。STAR-Fusionを用いた融合遺伝子の出力データから、その形成に関わった染色体構造異常の予測を試みた。特に注目したのは、同一細胞株内で、1つの遺伝子が複数の遺伝子と融合遺伝子を形成しているもので、そのような融合遺伝子の組み合わせを“promiscuous融合”と定義した。Promiscuous融合は38細胞株中に74種類存在していた。その数は1細胞株あたり1組(22細胞株)〜5組(2細胞株)であった。Promiscuous融合の形成様式は、3-way転座や欠失挿入により単純な1回の構造変化で説明が可能なものと(13細胞株の13組のpromiscuous融合)、そのような1回の構造変化では形成できないと考えられるもの(28細胞株の61組のpromiscuous融合)に分けることができた。単純な構造変化で説明可能なものの中には、2本の染色体間での部分的な相互転座のような、従来の染色体分析では同定が難しい染色体構造異常の存在が推定できるものもあった。このような構造変化の存在を1組の融合遺伝子から推定することは難しく、promiscuous融合に着目して解析することは、非常に有効な戦略と考えられた。次世代シーケンスデータ中には既存研究では十分解析されていない重要な情報が多く含まれており、がんにおけるゲノム異常の未知のメカニズムの解明にとって、これらのデータを有効に利用していくことが重要である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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