本研究の目的は、APOBEC3遺伝子がMGUSから多発性骨髄腫の進展および悪性化を促進するという仮説の検証、APOBEC3遺伝子の骨髄腫進展予測と治療介入のマーカーとしての応用、これを標的とする抗骨髄腫薬の開発である。骨髄腫細胞においてはAPOBEC3B(A3B)が特異的に強発現していたが、骨髄腫細胞株ではintron7が含まれた異常なmRNA(A3Bi7)が発現していることを見出し、A3BおよびA3Bi7を強発現するトランスジェニックマウスを作成し、骨髄腫発症確認のためのライン化を準備している。共同研究施設におけるMGUS/骨髄腫患者におけるA3B強発現とA3Bi7の特異的発現を確認した。A3Bi7と正常A3Bの機能の違いを明らかにするため、A3Bi7と野生型A3B cDNAを293細胞に導入したところ統計的有意差を持ってA3Bi7導入細胞でcytidine deaminase活性が高かった。導入細胞の長期培養にてp53遺伝子ではGC>AT点突然変異がA3Bに比べA3Bi7導入細胞では著明に高頻度でありA3Bi7の強発現が骨髄腫において遺伝子変異蓄積を促進している可能性を示唆している。A3B及びA3Bi7発現の骨髄腫悪性化に与える影響を解析するためそれぞれMM1S骨髄腫細胞株に遺伝子導入した。A3Bi7はA3Bと比べ高分子量として蛋白発現を確認できA3Bi7はスプライシングされずタンパク発現していることが推察された。続いてA3B及びA3Bi7の抗骨髄腫薬による発現変化を解析した。MM1S 、KMS12BM骨髄腫細胞株において、OHCYやL-PAMの添加によりA3B及びA3Bi7の顕著な発現亢進が観察され、OHCYでは濃度及び時間依存性の発現亢進が認められた。アルキル化薬によるDNA damageに伴ってA3BおよびA3Bi7の発現が亢進したと考えられた。上記と合わせアルキル化薬によるAPOBEC3B発現亢進により遺伝子変異の蓄積に繋がると考えられた。
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