現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒツジ胎仔体内でのヒトiPS細胞由来中胚葉細胞の動態解析を目的として、初年度は次の実験を行なった。ヒトiPS細胞を、6日間にわたってサイトカイン添加下でOP9ストローマ細胞と共培養し、妊娠60日齢前後(満期147日齢)のヒツジ胎仔肝臓内に移植した。移植手技は、子宮壁越しに超音波ガイド下で胎仔の肝臓を把握し、細胞を注入する方法である(Abeら, 2014, 2012, 2011, 2009)。移植1週間から2ヶ月後に、ヒツジ胎仔の肝臓および骨髄を採取し、移植前は陰性であった、CD45などの血球マーカーの発現およびN1ICDなどのNotchシグナル伝達経路活性化マーカーを免疫染色で評価し、動態および変化を捉えることを試みた。その結果、移植後に移植細胞ではCD45を陽性化し、Notchシグナルが活性化していることを明らかにした。今後、リンパ球系や赤血球系などの血球系統別マーカーを用いて、分化した細胞をさらに詳しく解析していく。 また、試験管内での分化誘導技術への応用を目指し、共培養系の確立を試みている。造血発生に関与することが推測されるヒツジ胎仔組織由来の造血支持細胞として、肝臓および骨髄からストローマ細胞を、臍帯静脈から血管内皮細胞の培養を試みた。その結果、肝臓および骨髄からストローマ細胞を、臍帯静脈から血管内皮細胞を培養することに成功し、さらに複数株を不死化することに成功した。上記の体内動態の解析で明らかになったマーカーを用い、ヒトiPS細胞由来の中胚葉細胞と共培養を行うことで、支持細胞としての有効性を評価していく。
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