研究課題
骨髄や臍帯血を用いた造血幹細胞移植は、がん治療や細胞移植のための有効な治療手段である。造血幹細胞のドナー不足が続く近年、新たな移植細胞源としてiPS細胞の活用が期待されているものの、iPS細胞の造血幹細胞への分化誘導はいまだに難しいのが現状である。このような背景の中で申請者らは、妊娠早期のヒツジ胎仔が免疫寛容を誘導することを利用し、造血発生の場である肝臓内でヒトiPS細胞由来の中胚葉系造血性内皮細胞(造血幹細胞の前駆細胞であり、血管内皮細胞の特徴を併せもつ)から造血幹細胞を分化させることに成功した(特許第6861405号)。しかしながら、ヒツジ胎仔肝臓内でのヒト造血幹細胞の産生・分化のメカニズムは明らかにできていない。そこで本研究では、ヒツジ胎仔体内でのヒト造血性内皮細胞の動態・変化を明らかにし、ヒツジ造血支持細胞との共培養系を用いて造血幹細胞の産生・分化に寄与する因子を抽出することで、試験管内で造血幹細胞を分化誘導できる技術の開発を試みた。その結果、造血性内皮細胞はヒツジ胎仔肝臓内でCD45を発現し、Notchシグナルを活性化することを見出した。また、ヒツジ胎仔肝臓や骨髄、臍帯静脈から細胞を初代培養し、その一部は不死化を行った。これまでに複数株のストローマ細胞または血管内皮細胞が得た。しかし現状では、これらの細胞とヒトiPS細胞由来造血性内皮細胞との二次元での共培養では、上記で見出したマーカーを発現するような培養方法が確立できていない。以上より、ヒトiPS細胞由来造血性内皮細胞はヒツジ胎仔肝臓内で、Notchシグナルを介して、多系統分化能を特徴とする造血幹細胞へと分化することを明らかにした(ExpHematol., 2021)。ヒツジ胎仔体内で起きる造血幹細胞への分化誘導メカニズムを試験管内に応用するには、培養法のさらなる改善が必要である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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