研究課題/領域番号 |
18K08340
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
樋口 雅也 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50334678)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | USP10 / DNA修復 / 相同組み換え修復 / DNA-PKcs / PP6 |
研究実績の概要 |
本研究ではUSP10の基質蛋白を同定し、USP10による造血幹細胞 (Hematopoietic Stem cell:HSC) 維持機構の分子メカニズムを解明することを目的としている。昨年度までにKO MEFを用いた解析により、USP10がDNA2重鎖切断修復、特に相同組み換え修復(HR)に重要であることを明らかにした。HRの異常がHSCの枯渇を引き起こす変異マウスとして、DNA-PKcsの自己リン酸化部位であるABCDEクラスターにアラニン変異を導入したマウスが知られている。このマウスは胎生期にHSCの枯渇を来すというUSP10 KOマウスと極めて類似した表現型を示す。これらのことから、USP10 KOマウスはDNA-PKcsの機能異常をきたしており、この結果HR修復系の異常とHSC枯渇が起こっているという仮説を立てた。これを検証するため、USP10 KO MEFでDNA-PKcsをノックダウン(KD)したところ、HR活性の回復が認められた。したがってUSP10はDNA-PKcsの活性制御に重要な分子であることが示唆された。さらにUSP10の結合分子データベースにてDNA-PKcsの活性制御に関わる分子を探索したところ、Protein Phosphatase 6(PP6)holoenzyme がヒットした。PP6はDNA-PKcsのABCDEクラスターを脱リン酸化することが知られている。そこでUSP10 KO MEFでPP6をKDしたところ、DNA-PKcs KDと同様にHR活性の回復が認められた。以上より、USP10はPP6の活性を負に制御しており、この結果DNA-PKcs ABCDEクラスターの脱リン酸化が抑えられ、DNA-PKcsの活性が適切に制御されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では今年度中に近接ラベル法を用いたUSP10結合蛋白の網羅的同定を行う予定であったが、諸事情により実施不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
USP10がどのような分子メカニズムでPP6およびDNA-PKcs活性制御に関わっているかを明らかにする。USP10の基質蛋白を網羅的に同定するため、BioID2もしくはAirIDを使った近接依存性標識法を新たに導入する。具体的にはUSP10にビオチン化酵素BioID2もしくはAirIDを融合しUSP10 KO細胞に発現させ、ビオチン化蛋白をLC-MS/MSにより同定する。これらと抗ユビキチン抗体によるプルダウンを組み合わせて、DSB修復過程におけるUSP10基質分子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施に遅滞が生じ、試薬等の購入が減少した。 令和3年度の物品費に充当する。
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