研究実績の概要 |
2020年度にHLA-DPB1*04:02/ DPB1*41:01の2座不適合非血縁者間同種造血細胞移植後の患者末梢血単核球を照射して不活化した移植前の末梢血単核球で刺激した際は、CD4陽性T細胞は増殖したものの目的とした不適合HLA-DPB1*04:02に特異的なクローンは一切得られなかった。この理由として移植後末梢血には制御性T細胞や抑制性の単球が存在することと、適合しているHLA-A,B,C,DR,DQ分子に提示されるマイナー組織適合抗原へアロ免疫が向かってしまう可能性が考えられた。そこで、(1)移植後末梢血から分離されたCD4陽性細胞を反応細胞とする、(2)刺激細胞として移植前単核球だけでなく、より特異的な刺激として不適合HLA-DPを導入したドナー由来B-LCLも用いる、(3)Th1型T細胞を優先的に刺激・維持出来るようにinterleukin-7とinterleukin-12を添加する、ことを試みた。 この結果、DPB1*09:01など3種類のHLA-DP不適合移植を受けた2例の末梢血CD4陽性細胞が、単回刺激だけで14日間で13~260倍増殖出来るようになり、かつ目的とした不適合HLA-DPに反応するT細胞集団も5~30%の効率で得られるようになった。結果として各T細胞株から90種類前後のクローンが得られ、そのうちの20%前後が不適合HLA-DP反応性のクローンであった。これまでに収集した白血病検体のうち3種類がDPB1*09:01を保有していたため、DPB1*09:01反応性クローンと反応させたところ、2種類のクローンが全てのDPB1*09:01陽性白血病細胞と反応し、うち1つはDPB1*09:01強制発現非血液細胞にほとんど反応しなかった。このクローンはGVHDを回避しつつ抗白血病効果をもたらすT細胞療法への応用が可能と期待され、さらに開発を進める予定である。
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