研究課題/領域番号 |
18K08343
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
高見 昭良 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80324078)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 造血幹細胞移植 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
日本骨髄バンクと日本造血細胞移植データセンターの協力を得て、同種造血細胞移植の成否に関わる免疫調整遺伝子多型の同定と、機能性・分子基盤の解明を開始した。同種造血細胞移植関連免疫遺伝子多型として、今回新たに2遺伝子(ADAMTS13、UNC93B1)を同定した。まず、非血縁者間同種骨髄移植を受けた血液がん281例(急性骨髄性白血病165例、急性リンパ性白血病65例、骨髄異形成症候群51例)を対象に、ADAMTS13遺伝子多型と移植後転帰との関連を検討した。ADAMTS13 rs2285489 (C > T)に関して、患者がC/C型(ADAMTS13低誘導能型)の場合に合併症が多く、無進行生存率が有意に低くなることがわかった。これらは、患者の血管内皮細胞や肝細胞などから産生されるADAMTS13自体が、移植合併症予防・治療に効果的に作用している可能性も示唆しており、新知見である。次に、非血縁者間同種骨髄移植を受けた血液がん237例(急性骨髄性白血病98例、急性リンパ性白血病46例、骨髄異形成症候群38例、悪性リンパ腫24例、慢性骨髄性白血病10例、骨髄増殖性腫瘍3例、多発性骨髄腫1例)を対象に、UNC93B1遺伝子多型と移植後転帰との関連を検討した。UNC93B1 rs308328 (T>C)に関して、ドナーがC/C型(UNC93B1低誘導能型)の場合に合併症が多く、移植後生存率が有意に高いことがわかった。UNC93B1は、Toll様受容体関連タンパクで、感染症などを契機に、炎症性サイトカインの誘導にかかわっている。これらは、微生物の排除に必要な機能であるが、移植患者の場合は、抗サイトカイン血症を助長し、臓器障害を惹起する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫調整遺伝子多型の臨床解析は順調で、機能解析も並行して進めている。学会発表、論文投稿も行っており、おおむね順調に進展していると判断している。ただし、マイクロRNAによる制御など分子基盤の解明に着手するまでには至らず、当初の予定以上に進展している状況にはない。
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今後の研究の推進方策 |
今回新たに同定した2遺伝子(ADAMTS13、UNC93B1)多型はいずれも下流非翻訳領域にあり、マイクロRNAによる調整を受けている可能性がある。今後これらを検証し、分子基盤の解明を目指す。最終的に、移植後合併症を効果的に減らす新規治療法の開発につながると考える。なお、ADAMTS13遺伝子多型の効果は、悪性リンパ腫の患者ではみられなかった。遺伝子多型の影響が疾患毎に異なる可能性もあり、検証と解明を目指したい。今後はこれらの機能的遺伝子多型を健常人・患者の血液細胞や細胞株へ導入し、アリル特異的な抑制・増強が発現レベルやサイトカイン産生能、細胞機能に与える影響やマイクロRNAの影響・制御を検証する。前方視的研究への参加が不足する場合は、インターネットを用いた広報活動を強化する。
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