研究課題
令和元年度は以下の4つの課題に取り組んだ。(1)GVHDの新規バイオマーカー探索:海外との共同研究で、質量分析器を用いて血清中の400以上の蛋白を比較して得られた6つの候補と、病態生理に基づく4つのバイオマーカー候補を、別のコホートで検証した。硬化型GVHDの新規バイオマーカーであるDickkopf-related protein 3 (DKK3)を発見し(wntシグナルに関連)、論文投稿した(2020年4月に受理)。閉塞性細気管支炎のバイオマーカーは論文化を進めている。日本人の消化管GVHD100症例の前向きな検体収集が終了した。(2)関節・筋膜のGVHD評価法の改訂の基礎となるデータを海外のGVHDデータベースを利用して行い、論文化した。日本人のGVHDの特徴を論文化し、そのデータをもとに白人のデータとの直接比較を海外施設と連携して行い、結果をさらなる論文として発表した。(3)二次がんの細胞遺伝学的異常の解明は、自・他施設の二次がん37症例の残余病理検体からDNAおよびRNAを抽出し、201検体の解析を行った。混入するドナー正常細胞由来の遺伝情報を除去するアルゴリズムを開発し、BRCAness, MSIなどの二次がんに特有かもしれない変異パターンの傾向が明らかになった。研究協力施設6施設でIRB承認され、検体収集を開始した。また、がん周辺組織およびGVHDマウスモデルにおける腸管上皮の遺伝子変異解析も開始した。自施設での新規発症二次がんの生検体組織も収集が進んでおり、12症例のDNA抽出が終了し、解析を行い、HLA拘束性のネオアンチゲンの検索を開始する準備も開始した。(4)晩期障害の中で患者のQOLに影響する眼合併症についてGVHDが関連するものとそうでないものに分け、米国および欧州の造血細胞移植学会と共同で専門家としての総説を筆頭著者として作成した。世界中の移植医・眼科医との共同プロジェクトが2編の論文として受理された。
1: 当初の計画以上に進展している
令和元年度に予定していた研究内容以上のプロジェクトを実施することが出来た。硬化型GVHDの新規バイオマーカーであるDickkopf-related protein 3 (DKK3)を発見し、論文投稿を行った。現在は閉塞性細気管支炎のバイオマーカーに関する知見の論文化を進めている。関節・筋膜のGVHD評価法の改訂の基礎となるデータを論文化した。日本人のGVHDの特徴を論文化し、そのデータをもとに白人のデータとの直接比較を海外施設と連携して行い、結果を論文化した。二次がんに関しては、症例数と解析検体数が順調に増え、混入するドナー細胞由来の遺伝情報を除去するアルゴリズムがほぼ確立できた。収集された事例でpreliminaryな二次がん特有と考えられる変異が見つかった。多施設検体収集体制もこの1年で充実し、本年度はさらに検体収集が進む予定である。晩期障害の中で患者のQOLに影響する眼合併症について米国および欧州の移植学会と共同で専門家としての2編の総説を筆頭著者として発表した。
(1)GVHDの新規バイオマーカー探索:海外との共同研究者と議論を重ね、閉塞性細気管支炎に関して得られた知見の論文化を進める。日本人で収集した検体を用いてGVHD関連蛋白測定を継続する。(2)二次がんの細胞遺伝学的異常の解明:他施設からの検体と臨床情報収集をさらに継続し、様々な仮説に基づいた解析を開始する。がん周辺組織の解析、二次がんマウスモデルでの解析も開始する。
本研究では海外研究協力者との頻回なコンタクトは重要であり、情報収集も含めた年2回程度の国際学会や研究打ち合わせ会議の渡航費用を見込んでいたが、電話やWeb会議を効率的に利用することで経費を節約することが出来た。次年度は論文化を進めている研究に関し、英文校正費(外部に依頼するため謝金)、通信費、投稿・出版費といった費用が必要になる予定である。また、バイオマーカーの測定キットを追加で購入予定であり、100検体程度の測定を予定している。通常1つのキットで1つの候補蛋白を40検体測定可能である。またキット価格は蛋白によって異なるが1キット15万円程度である。検査する候補蛋白は3つ以上となる可能性がある。多施設から二次がん検体がさらに収集される予定であり、解析費用も必要である。また、情報収集を含めた国際学会や研究打ち合わせ会議の必要があり、旅費も必要である。以上の計画に次年度使用額を含めた研究予算を使用する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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