研究課題/領域番号 |
18K08346
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
小井詰 史朗 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (60416063)
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研究分担者 |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (00254194)
河内 利賢 日本大学, 医学部, 助教 (10328205)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん関連血栓塞栓症 |
研究実績の概要 |
がん関連血栓塞栓症(CAT)はがん患者の予後不良性と関連する重要な合併症である。がん細胞は異所性に血液凝固第7因子(FVII)を産生可能であるが、そのCATへの重要性は不明である。昨年度は異所発現性FVIIのCAT発症への効果を検証するためにFVII遺伝子の発現を恒常的に抑制した卵巣がん細胞の作製を市販のゲノム編集(CRISPR/Cas9)キットで検討したが、十分に遺伝子構造の破壊された細胞の取得には至らなかった。本年度は、遺伝子構造改変原理の異なるゲノム編集キットにより昨年に引き続きゲノム編集法によるFVIIの遺伝子のノックアウトを試みた。しかしながら同様に目的の細胞取得には至らなかった。当研究室では同様の方法で他の複数の遺伝子の発現を抑制した細胞の取得には成功しているため、あらためて本遺伝子を標的としたゲノム編集が困難であることが推察された。次に方針を変え、FVII遺伝子を恒常的に強制発現させた卵巣がん細胞とその陰性コントロール細胞を作成しFVII発現の効果を検証することとした。卵巣がん細胞ES2にFVII遺伝子発現ベクターと陰性コントロールベクターをトランスフェクションして薬剤耐性をマーカーとしてFVII発現細胞クローンを単離した。これらの細胞についてFVIIの発現、増殖能、細胞外小胞(EVs)分泌能、EVs粒子特性、EVs血液凝固活性を測定した。その結果、FVIIの発現はEVs血液凝固活性を増強させるのみならず、EVsの分泌を増加させる効果があることが明らかになった。また、in vitro 細胞増殖実験ではFVII発現は細胞増殖に影響を与えないことが分かった。今後これらの細胞を実験動物に移植することによりFVII発現の腫瘍増殖における影響、CAT発症における効果を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画であるゲノム編集法によるFVII遺伝子ノックアウト細胞の取得を断念し、実験方法の変更を余儀なくされたため。現在の計画に基づく研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
ES2細胞を用いた今後の動物実験において動物血液中の血栓塞栓症関連マーカー(D-ダイマー等)を測定してFVII強制発現のCAT発症促進効果を予測する。その後、実際の血栓塞栓誘発動物実験を行い、FVIIの効果により実際に血栓形成が促進されるか等を検討する。また、ヒトが腫瘍組織におけるFVII発現レベルを免疫組織染色法により解析し、その結果と臨床パラメータとの相関性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画が期待通りに進まず、研究方法の再考に時間を要したことに加え、想定通りに研究が遂行された場合に必要とした物品等の購入がなかったために次年度使用額が生じた。現在研究方法を再考し直し、おおむね順調に研究計画が遂行されているので引き続き次年度使用額と合わせた助成金を利用して研究計画を遂行する。
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